オンリーワンの技術で 「ASAHIブランド」の確立を図る

2020年6月に経済産業省の「グローバルニッチトップ企業100選」に認定された朝日インテック。主力製品のPTCAガイドワイヤーは、産業用ワイヤーで培った独自技術を医療用機器に転用し、進化させたものだ。世界規模でのさらなるシェアアップのため、新領域開拓を目指す宮田社長に話を聞いた。

産業用ワイヤーのコア技術を
命を救う医療機器に活かす

朝日インテックの前身は、現代表取締役社長である宮田昌彦氏の父が1976年に設立した「朝日ミニロープ販売株式会社」だ。OA機器や自動車のアクセル駆動部品に使用されるステンレス製極細ロープの販売で実績を挙げ、4つのコアテクノロジー(素線を細くする伸線技術、素線を撚り合わせるワイヤーフォーミング技術、ロープに樹脂を被膜するコーティング技術、ワイヤーの操作性を高めるトルク技術)に磨きをかけてきた。この技術力の高さこそが、医療機器業界への参入という大きなターニングポイントを引き寄せたのである。

朝日ミニロープ販売の創業時の社屋

「1980年頃にオリンパスから、内視鏡向けの操作用ステンレスワイヤーを受注したのが始まりです。しかし、それがすぐに事業に直結したわけではなく、転機は1985年のプラザ合意による円高でした。産業機器業界での価格競争の激化を予測した当社は、競争力強化のため、1989年に海外生産拠点としてアサヒインテックタイランド(タイ工場)を設立しました。工業用のアッセンブリ工程をタイへ移管したのですが、これにより国内の開発・生産に余力が生まれ、国内の技術者を活用するために第二の事業の柱を模索していたところ、当社のワイヤー技術により、血管治療用のガイドワイヤーが作れる可能性があることがわかったのです。低侵襲製品で付加価値が高く、成長性や社会貢献が見込める分野であることから、すぐに開発部隊を立ち上げ、開発に着手しました」と、宮田氏は経緯を振り返る。

宮田 昌彦(朝日インテック株式会社 代表取締役社長)

スピードと対応力で
名医たちの要望を形に

同社は大手医療機器メーカーで検査・治療用ガイドワイヤーを開発した技術者を招くとともに、トップドクターへのヒアリングを重ね、要望を一つずつ具現化。ガイドワイヤーは1992年に製品開発に成功し、1994年から販売が開始された。

回転追従性と操作性が特徴の医療用ガイドワイヤー

1995年には慢性完全閉塞病変(CTO)治療用ガイドワイヤー「Miracle(ミラクル)」を開発し、販売開始から2年で国内シェアの20%を獲得している。当時、血管が完全に詰まったCTOの治療は外科(バイパス手術)に頼るしかなく、海外の大手医療機器メーカーも技術的問題などを理由に、CTO治療用のガイドワイヤーを開発していなかった。しかし、日本のトップドクターたちはこのガイドワイヤーができれば患者への負担が大きい外科手術によることなくCTOの治療ができると考え、朝日インテックに開発を依頼したのだという。

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