修了生に密着取材 地域と協働し、持続可能な未来を拓く

地域活性をテーマに土曜の朝を彩るテレビ番組「羽田土曜会」(BSテレビ東京)。日本各地で地域活性に取り組む人物に密着し、地域を元気にするヒントを探ってきた。9月5日の放送は、大手飲料メーカー社員の立場で広島を拠点に国産レモンの生産拡大を志す土屋 淳一氏の構想と活動に迫る。

BSテレビ東京が毎週土曜日の朝7時30分から全国放送する『羽田土曜会 ~ニッポンを元気にする地域の星~』は、羽田土曜会座長で羽田未来総合研究所社長の大西洋氏と、番組MCの伊藤聡子氏が、ゲストととともに地域課題解決への取組や先進的事例、自治体と企業のコラボ事例など、地方で奮闘する人々の取組を紹介する番組だ。大西氏が社長を務める羽田未来総研は、羽田空港のナレッジとポテンシャルを活かし、新たなビジネス・価値、未来を創造する研究所。『羽田土曜会』は、日本と世界をつなぐ羽田空港で収録されており、地方創生に奮闘する人々の活躍を羽田から日本中に発信することで新たなつながりを生みだすことを目標としている。

メーカーが離島でレモンを栽培
地域を活性化する事業構想

9月5日の放送回では、事業構想大学院大学の修了生で、ポッカサッポロフード&ビバレッジ(以下、ポッカサッポロ)レモン・プランツミルク事業本部 事業企画部の土屋淳一氏が広島県大崎上島で取り組む「国産レモンで地域活性化」の事業が紹介される。

ポッカサッポロフード&ビバレッジ レモン・プランツミルク事業本部 事業企画部 オールレモングループ リーダー(事業構想大学院大学 修了生)土屋淳一氏

レモン素材研究の先進企業として知られるポッカサッポロは、「ポッカレモン100」や「キレートレモン」に代表されるレモン商品でレモンの価値啓発を行い、市場を作ってきた。2019年度は、「キレートレモン」と「ポッカレモン100」が過去最高の出荷量を記録し、レモン事業の売上は前年比8%増の250億円に達している。レモンは、その健康効果や美容効果が注目を集めており、市場は拡大傾向にある。

だが、国産レモンは高齢化で生産者が減少し続け、需要に供給が追いついていない。日本で流通する国産レモンはわずか1割程度で、ほとんどが海外産という状況だ。

そこで土屋氏が考えたのが、瀬戸内海に浮かぶ離島・広島県大崎上島で国産レモンの営農事業を行い、レモンの産地として地域を活性化させ、継続的に地域とレモン事業を発展させる構想だ。2019年4月に大崎上島でレモン栽培を始めると、なぜ大企業がわざわざ離島でレモンの栽培に取り組むのかと話題となった。

土屋氏が地域と協働でレモン栽培に取り組む、広島県の大崎上島(左)。番組のロケでは、現地の生産者とともに、レモンを活用した料理の試食も行った(右)

番組では、土屋氏がレモンの栽培に着目し、どのように事業を構想し実行に移していったのか、その経緯をひも解きながら新規事業による地方創生の成功のポイントを探究していく。

新規事業による地方創生
求められる人材や課題解決力とは

どのような新規事業でも、立ち上げの際には次々と課題に直面する。自分の発想は間違っていないだろうか。どこをゴールとしてめざすべきか。課題を克服するにはどういった視点が必要なのか...。「社内だけで課題に向き合っていたのでは行き詰まる」と考えた土屋氏は、外部の視点を得るために、さまざまな専門を持つ教授陣と多様なバックグラウンドを持つ院生が集まる事業構想大学院大学に入学。事業構想修士(MPD)の学位を取得し、2018年3月に修了した。

土屋氏のロケ取材を受けてスタジオには事業構想大学院大学の田中里沙学長がゲスト出演し、「未来を構想する力」を育む大学院の概要や特色を紹介。院生は在学中に自身のアイデアを深堀し、自社の資源を生かした構想を研究し、修了時には「事業構想計画書」を作成する。その計画書を基に、新規事業を実践している。

9月5日の放送では、番組MCの伊藤聡子氏(左)と、羽田土曜会座長の大西洋氏(中)とともに、田中里沙学長(右)がスタジオで議論を深めている。

入学して議論の深さと幅の広さに驚いたという土屋氏は、大学院で具体的にどのような研究を得て、新しい価値を見出し、事業構想を固めていったのか。土屋氏へのインタビューや、現在の院生の授業の様子の取材映像から、事業を構想できる人材とはどのような人材なのか、コロナ禍での新事業のあり方や人材育成の今後について大切なこと、価値のつくり方など多角的な議論が展開される。

地域活性化の担い手へ
ヒントが盛りだくさんの番組

地方創生を果たす新規事業の場合、自治体や地元の方々と連携した協力体制を整えられるかが事業を持続的なものとして成功させるうえでは鍵となる。ましてや農業経験ゼロの企業人が地方で一からレモンの栽培を行うような場合はなおさらだ。土屋氏は、事業構想大学院大学で学んだ「事業の社会的な価値と持続成長を考える」という考え方で現場に入り、レモンの栽培だけでなく、生産者の高齢化や耕作放棄地の増加、栽培技術の断然など、地域の課題と向き合うようになる。

取材VTRでは、広島の現地にサテライトオフィスを設置した土屋氏が、地元の人々と交流を深めていく様子や、失敗する事業と成功する事業の差はどこにあるのかという自治体担当者の見解に触れる。

土屋氏がめざすのは、「ポッカサッポロといえばレモンの会社」という、ゆるぎないブランド価値の構築だ。そのために瀬戸内海のレモン産地と共に成長していきたいと志向する。

『羽田土曜会』は毎回、丁寧な地域ロケ取材を通して取組の内容に迫る。そこから見えてくるのは、成功の裏にある苦労と同時に、この先の目標や新しい事業の種が見つかる過程だ。スタジオではVTRを見て、キャストとゲストが語り合いながら事業によって地方創生を成功させるポイントを模索していく。新規事業で地域を より良くしたいと考えている人にとって、事業を構想し実行するうえで有効なヒントを得られる番組である。

放送内容

羽田土曜会 ニッポンを元気にする地域の星
BSテレビ東京
放送日:9月5日(土)午前7時30分
放送終了後、オンラインでも配信されます。