IPCC報告書が示すもの 地域資源を活用し温暖化を防止
2019年に公表された国連機関IPCCの報告書は、食料・水など人類の生存に欠かせない要素の確保と、気温上昇を1.5度に抑えるための温室効果ガスの排出抑制・吸収・固定の両立を実現しようというものだ。肉食から穀物食への移行、フードロス抑制などの多くの提言の中、日本はこの報告書をどう解釈すべきか。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、2019年8月、「土地関係特別報告書」を公表した。世界の陸地の利用状況と気候変動に関するこの特別報告書の検討が始まったのは2016年4月。編集者(Review Editor)として報告書の作成にかかわった国立環境研究所主席研究員の山形与志樹氏に話を聞いた。
限られた土地と温暖化抑制の両立
温室効果ガスの排出に伴う気候変動を抑制するための国際的な試みは、1992年の地球サミットに始まり、1997年12月の京都議定書を経て、2016年11月に発効したパリ協定へと続いてきた。二酸化炭素(CO2)やメタンガスの排出を減らすなどして、世界の平均気温上昇を抑制することを目指している。パリ協定では長期目標として、気温上昇は産業革命以前に比べ1.5度以内に抑える努力をすることを掲げている。
このような枠組みを検討する間にも、温室効果ガスの排出は続き、世界中で豪雨や干ばつなどの災害が生じている。そこで注目されたのが、バイオ燃料CO2回収貯留(Bio-Energy withCarbon Capture and Storage:BECCS)という手法だ。BECCSのスキームでは、化石燃料の使用量を減らすために、その大部分をバイオ燃料に切り替える。バイオ燃料の原料になる植物は、農地や人工林で育てていく。バイオ燃料を燃やすときに排出されるCO2は、原料の植物が生育する際に吸収されるので、総合的に見るとCO2排出量はゼロになる。大量に植物を育て、燃焼から排出されるCO2を更に回収・貯留すれば、エネルギーを確保しつつ二酸化炭素を吸収することも期待できる。
山形氏らは、温室効果ガス排出をマイナスにする様々な手法を用いた「ネガティブエミッション」について、自身が代表をつとめるグローバル・カーボン・プロジェクト(GCP)つくば国際オフィスを核に国際共同研究を進めてきた。そして、BECCS技術の実現はまだ多くの課題があることを明らかにし、それが今回の特別報告書にも反映されている。
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