2020年4月号

地域特集 広島県

広島県・湯﨑知事 DXに注力、デジタル化で先を行く

湯﨑 英彦(広島県知事)

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2010年に10年後の県のあるべき姿を描いた長期計画を策定し、「イノベーション立県」への取組を早くから進め、成果をあげてきた広島県。湯﨑知事は今、DX(デジタルトランスフォーメーション)で先行することを目指す。

湯﨑 英彦(広島県知事)

イノベーション創出へ
人材育成と環境整備を進める

――湯﨑知事は、2010年に長期計画「ひろしま未来チャレンジビジョン」を策定し、重点施策として産業イノベーションを推進しています。

湯﨑 イノベーション創出のためには、イノベーションが生まれやすい環境整備とエコシステムの構築が重要だと考えています。イノベーションの創出拠点として設置した「イノベーション・ハブ・ひろしまCamps」は、人材育成や新ビジネス創出のためのプログラムを年間250件以上実施しています。そこには新たなチャレンジをする多様な人材が集い、人がつながって情報や知見が結合し、イノベーションが次々と生み出されるエコシステムの形成が進められています。

新ビジネスなどにチャレンジする多様な人が集まるイノベーション創出拠点「イノベーション・ハブ・ひろしまCamps」

また、AI、IoT等の最新のデジタル技術を活用した実証実験の場である「ひろしまサンドボックス」も整備しています。県内の企業に限らず、技術やノウハウを保有する企業や人材を呼び込んでおり、ひろしまサンドボックス推進協議会には約900者を超える企業等が参画しています。県として、2018年度~20年度の3年間で10億円規模の予算を用意しており、9つのプロジェクトが走っています。現在も参加企業が増え続けているなど、新しいサービスを生み出そうという機運がどんどん高まっています。

さらに、創業・第二創業の支援にも力を入れています。ひろしま創業サポートセンターを中心に、県内の支援機関と「オール広島創業支援ネットワーク」を構築し、創業希望者等のサポート業務にあたっています。サポートセンターでは6年間で2000件以上、年間300件以上の事業が創出されており、手応えを感じています。

DX推進本部を設置、
デジタル変革を後押し

――近年、多くの自治体がイノベーションを目指した施策を行っています。広島県は「イノベーション立県」を目指して早くから取組を進めてきましたが、県経済の強みと課題について、どのように考えていますか。

湯﨑 広島県には非常に厚い産業基盤があります。特に製造業は、中小企業からグローバルな大企業まで、非常に幅広い集積があります。

また、進取の気風が強く、全国的に有名なブランドもたくさん生まれています。一から事業をつくり上げてきた人々が数多くいる、そうした土壌の存在が広島県の強みだと考えています。

一方で課題は、サービス関連やデジタル関連の蓄積が弱いことです。広島県の主要産業である自動車や造船、機械、半導体などはグローバル競争が非常に激しく、デジタル化によるゲームチェンジも起きています。

従来、ものづくりの世界では、デジタルやITは生産性を高める手段として使われてきました。しかし今は、デジタル化の進展によってビジネスモデルそのものの変革が求められています。私たちも早急にデジタル技術の知見を高める必要があります。そうした考えの下、広島県は2019年7月に「デジタルトランスフォーメーション(DX)推進本部」を設置しました。

――DX推進本部では、具体的にどのような取組をされているのですか。

湯﨑 DX推進本部は、「仕事・暮らしのデジタル化」「地域社会のデジタル化」「行政のデジタル化」という3本柱で取組を進めています。

DXには、企業内の業務改革を促すようなDXもありますが、AirbnbやUberのように、デジタル技術によって今までになかったサービスが生まれたり、ビジネスモデルがまったく新しいものに変化するようなことも起きています。こうした動きは、一企業の枠を超えた社会的な構造転換です。

例えば、スマートシティを実現することは、一企業ではできません。蓄電池を設置したり、地域の電力をマネジメントするプラットフォームが必要だったり、電気自動車を組み合わせたりと、さまざまなプレイヤーが連携することで社会システムとして機能します。

業界横断的な取組が必要になりますから、行政が率先して土台を整えたり、データの蓄積・活用のルールづくりなどに関わっていくことが重要になります。デジタル化の進展で何が起きるのかは未知数なところがありますから、広島県は積極的なチャレンジを続けて知見を蓄え、先行してDXに取り組んでいきます。

デジタルマーケティングで
観光資源に磨きをかける

――観光振興については、どのような施策を進めていますか。

湯﨑 観光振興は、産業政策としても重要です。広島県の観光客数は、豪雨災害前の2017年まで6年連続で過去最高を更新するなど、着実な増加傾向にあり、インバウンドも成長しています。トリップアドバイザーの「外国人に人気の日本の観光スポットランキング」では、広島平和記念資料館と宮島が毎年トップ3に入っています。

旅行者も宿泊施設も増えていますが、その効果を県内全域にまだ十分広げられていないことが課題です。人口減少により国内旅行市場は縮小しますから、より多くのインバウンドを取り込み、国内外のリピーターを増やしていく必要があります。そのためには、私たちが提供できる価値をもう一度しっかりと見極め、その価値を磨かなければいけません。

例えば、宮島への玄関口である「宮島口」は、これまであまり注目されてきませんでしたが、観光客に宮島らしさを感じていただけるように、ターミナルを和風にリニューアルし、市とともに街の景観保護も行うことにしました。また、駐車場の混雑を解消する施策も検討しています。

さらに、昨年、ナショナルサイクルルートの一つに選定されたしまなみ海道サイクリングロードの環境整備にも力を入れていきます。

しまなみ海道サイクリングロードは2019年、ナショナルサイクルルートの一つに選定された

こうした「磨きをかける施策」を的確に行うために、お客様が旅行を検討される旅マエの段階から、広島県に滞在している旅ナカ、また、将来的には帰宅後の旅アトまで、さまざまなデータを活用したデジタルマーケティングで、磨くべきことを絞り込んでいきます。

2020年4月には、これまで県の観光課が担っていた観光施策の大部分を(一社)広島県観光連盟に移管し、より強化したマーケティングに基づいて、県域の観光施策を観光連盟において一元的に取り組めるように体制を強化します。また、観光施策を充実・強化するための財源確保に向けた検討も行っています。

今年は被爆75周年とオリンピックが重なりますので、海外から数多くの来訪客が予想されます。

2020年は被爆75周年の節目であり、広島県には海外からも数多くの来訪客が予想される

また、秋には「せとうち広島デスティネーションキャンペーン」も実施されます。キャンペーンではJRグループと連携して海外からのお客様も視野に入れたプロモーションを展開し、しっかりと集客を行い、訪れた観光客の満足度を高めていきます。

移住者にとっても魅力的な県に

――人口減少への対応については、どのように考えていますか。

湯﨑 人口減少には2つの側面があります。まず、死亡数が出生数を上回る自然減の問題。これは日本全体で起きていることですが、広島県も例外ではなく、2019年に自然減数が1万人を突破しました。これをできるだけ抑制しなければいけません。もう一つは、転出者数が転入者数を上回る社会減の問題です。広島県は、2015年前後は社会増でしたが、近年は減少に転じています。

日本全体で見ると、東京圏への一極集中が進むなど構造的な問題がありますから、自然減にしても社会減にしても、国全体で取り組むべき問題です。そのうえで、自分たちでできることに力を注ぐ必要があり、社会減対策としてUIJターンの促進に取り組んでいます。東京にある「認定NPO法人ふるさと回帰支援センター」内に、広島県への移住相談窓口を開設しました。また、学生が就職するタイミングでUIJターンを促進するために関西の大学と連携協定を締結しています。

こうした努力で、移住希望地ランキングで広島県は現在6位、最高時は4位まで上がりました。かつて約4000人だった広島県への移住者は近年、6000人を超えています。今後は移住相談窓口にAIを導入して、オンラインで対応する仕組みを構築するなど、デジタル技術を活用してサポート体制をより充実させていきます。

一方で、自然減対策のためには出生数を増やすことが重要です。出生率には家庭の経済状況が大きく影響し、夫と妻が2人で収入を得ている家庭は出生率が高くなっています。

共働き世帯を後押ししていくうえでは、働き方改革が欠かせません。長時間労働を是正したり、労働時間の短縮が収入減にならないように生産性を高めていくなど、ポジティブな改革を推進していきます。同時に、男性が家事を担当する、あるいは保育の環境を整えるといった総合的なサポートによって、子育てしやすい環境を整えていきます。

教育を変革し、人づくりに力を注ぐ

――「ひろしま未来チャレンジビジョン」は、2020年度が最終年になります。これまでの成果をどのように見ていますか。

湯﨑 これまでお話ししたとおり、いろいろな成果が出てきています。人口減少問題では一時期社会増に転じましたし、働き方改革に取り組む企業は6割に増えました。経済面もGDPベースで好調であり、有効求人倍率も上昇しています。

新しいチャレンジへの取組も生まれています。特に力を入れているのが「人づくり」です。2017年に乳幼児教育の基本計画である「『遊び 学び 育つひろしまっ子!』推進プラン」を策定しました。県内すべての保育園と幼稚園でこれを進めており、子どもたちの「感じる・気付く力」「うごく力」「考える力」「やりぬく力」「人とかかわる力」が育まれています。

小学校から高校までの教育は、「学びの変革」として、従来の知識を教える教育から、知識を活用して課題を解決する能力を育成する教育へとシフトしています。これをさらに深めていくために、広島叡智学園という、全寮制の中高一貫校を創設して、そこで授業方法やカリキュラムの開発を進めています。来年度は、これをさらに大学教育まで進めようと、新たな県立大学「叡啓大学」の創立を予定しています。

社会人に対しても、企業向けの人材高度化を図るための研修や、イノベーション人材育成事業などを実施しています。このように乳幼児期から社会人まで一貫した人づくりを行っています。

――現在、新たな長期計画の策定を進められていますが、今後の展望をどのように描いていますか。

湯﨑 DXが大きな柱になることは間違いありません。また、災害対策も重要です。気候変動で災害規模は年々大きくなっていますし、頻度も高くなっています。これにどう対応していくかは大きな課題です。さらに、人口減少やグローバルな構造変化への対応も急務であり、今後、外国人材の活用も拡大することが予想されますから、地域社会との共生も重要になります。

数々の課題に直面していますが、社会経済情勢の変化を踏まえながら、これからも新たな経済成長や人づくりに力を入れ、県民一人ひとりのために活気あふれる広島県を目指していきます。

 

湯﨑 英彦(ゆざき・ひでひこ)
広島県知事

 

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