自治体と進める分散型自給電源化 太陽光への切り替えを推進

化石燃料枯渇への懸念を受けた脱炭素社会への志向で、太陽光への注目が高まっている。集中型電源のデメリットも露呈するなか、分散型方式での電力自給へと切替を促し社会におけるエネルギーの持続可能性を高めようとする連携が始まった。

藤井 俊嗣 アイチューザー 代表取締役社長(左)、上平 義樹 神奈川県 産業労働局 産業部 エネルギー課(右)

国連では、「持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム(HLPF)」として、2015年9月に全会一致で採択された17の「持続可能な開発目標(SDGs)」の実施に関し、毎年7月にニューヨーク本部で政治的リーダーシップや指針・提言を提供するためのグローバルな協議の場を設けている。2018年には「都市」をテーマに6目標の進捗が検討され、「地方・地域政府フォーラム」が開かれるなど、自治体との結びつきが議論された。

日本政府や日本企業でも、HLPFを受けてSDGsを地域のサステナビリティ(持続可能性)を高めるベンチマークとする取組が広がっている。地域エネルギーは、その1つだ。

神奈川県では従来から、再生可能エネルギー等の導入を加速化し、エネルギーの地産地消を進める「かながわスマートエネルギー計画」を掲げ、太陽光発電の普及促進に取り組んでいる。今回、神奈川県は2008年にベルギーで設立したアイチューザーグループ(本社・オランダ)と協定を締結し、日本初(同社調べ)となる太陽光発電設備の共同購入を神奈川県内で実施する。その一環として、5月17日より「神奈川県 みんなのおうちに太陽光」キャンペーンを実施し、購入希望者の募集を始めている。

協定を結んだパートナーであるアイチューザーは、オランダ、ベルギー、イギリスにて約10年間にわたり「太陽光発電システム」および「お得な再エネ電気とガス」の共同購入事業を各国の自治体と協同で実施、太陽光発電システムは3カ国で4万世帯以上の導入実績がある。

エネルギーの地産地消は、SDG7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」につながる。自家発電の導入で皆が電気を自給でき、大規模停電のリスクが低減する。さらに太陽光発電を導入することで、環境貢献にも寄与すると期待される。

SDG7のロゴ 写真提供:国連広報センター

分散型電源自給への期待

「2011年3月11日に発生した東日本大震災では、大規模停電が起き、また最近でも2018年9月に北海道胆振東部地震で全道ブラックアウトが発生しました。これらの経験から、神奈川県では、火力発電などの集中型電源から、太陽光発電などの分散型電源への転換を図っています」と、神奈川県で太陽光発電グループを統括する上平氏。

「固定価格買取制度(FIT)の導入もあり、2016年度には、神奈川県内の太陽光発電の導入量は2010年度比で7倍になりました。FIT価格の低下などにより、近年は新規導入量が伸び悩んでいます。今回、アイチューザーの共同購入事業のスキームを伺い、県としても活用を思い立った次第です」

6月20日の登録締切までに、アイチューザーで住民向けの説明会も開催してきた。「太陽光発電は『高い買い物』であるからこそ、充分に納得していただき、設置していただきたいと思っています。神奈川県としては、分散型電源による発電量の割合を上げることで、『かながわスマートエネルギー計画』の2030年度までの数値目標の達成に寄与したいと考えています」

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