2019年7月号
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新規事業開発のための広報視点

流動化し分断される社会をつなぐ 広報の視点と学び

橋本 純次(社会情報大学院大学 助教)

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平成のインターネット社会から、令和の個人化社会への過渡期にあって、広報や経営はどうあるべきか。社会の流動化のなかで生き残るためには、どのような学びが必要か。メディア論の視点から総括する。

平成とインターネット

平成は、インターネットの時代だった。ポケットベル、携帯電話、スマートフォンと、デバイスが進化するにつれ、コミュニケーションのあり方はダイナミックに変化し、現代の人々はSNSを通じて他者と繋がり続ける生活をおう歌している。同時に彼らは、世界中の知識を手のひらに映し出し、常に新たな学びを得ている。

広報担当者は、インターネットを通じて、簡単に、安価に、消費者のニーズや動向を測定できるようになった。ネットではすべての個人が発信者で、たとえマイノリティであっても、自分の意見を能動的に他者と共有し、共感を得ることができる。ほとんどの組織がSNSのアカウントを持ち、日々「バズる」ためにしのぎを削る姿は、豊かなネット社会を映す鏡のようである。ネットを通じた広報に疎くとも、案ずることはない。「ネットユーザー」なる集団に対しては、インフルエンサーに協力してもらえば、簡単にアプローチできるのだ。

もはやテレビ、ラジオ、新聞、雑誌のような「オールド・メディア」は必要ない。その証拠に、インターネットの広告費は右肩上がりで、テレビも追い抜こうとしているのだから。この調子でネットをうまく活用し、日々の広報活動にまい進していけば、令和時代もきっと乗り切れるに違いない。

プロセスへの無理解という病理

そんなわけがない、ということに、読者の皆さまはお気づきのことだろう。我々は既に、ネットの有する多くのマイナス面を知っている。それを表す言葉だけでも、ネットいじめ、SNS疲れ、フィルターバブル、炎上、フェイクニュースなど、枚挙に暇がない。

インターネットは、他のあらゆるテクノロジーと同様に、人類にとっての理想郷をもたらしはしなかった。それどころか、「プロセスへの無理解」という社会的病理を生んでしまった。無限の知識へのアクセスを得た代償として、それぞれの知識が生まれた過程へのまなざしを失ったのである。

たとえば、ここ数年、社会の「多様性」を認めようという風潮がある。マイノリティが声を上げ、自らの存在を外部から認識されるようになったことは、疑いなくインターネットの功績である。しかしながら、多様性とは何を意味する言葉か、あなたは正確に答えることができるだろうか。マイノリティを頭から理解しようとしない態度は論外だが、そうでなくとも、表層的な理解に終始していないか、改めて問い直すべきである。あなたの知っている多様性は、メディアに登場「できる」多様性だけかもしれないのだ。

他にも、たとえば新商品のマーケティング戦略を立案する場合。インターネットを通じた調査結果によって、上司や自分自身を納得させることはできるだろう。しかし、それが客観性を備えているとは限らない。あなたは、調査を実施する前にストーリーや結論を思い描き、それを補強するための結果だけを取捨選択したことはないと、自信を持って言えるだろうか。そもそも、そのことの何が問題か、指摘できるだろうか。これは量的調査に限った話ではなく、インタビューのような質的調査も同様の問題を孕んでいる。

このように、過程を無視して結論だけを偏重する態度は、現代社会のあらゆる局面に見てとれる。プロセスへの理解なくして、知識だけを抽出しているとき、我々はインターネットに、情報に「使われている」だけではないだろうか。

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