外国人材は日本に何をもたらすか イノベーション先進地域の条件

シリコンバレーでは、移民起業家や移民技術者がイノベーションの担い手となっている。そうしたイノベーション先進地域のモデルは、日本や東京にも適用できるのか。日本における人的資本のグローバル化の可能性について、立教大学の山縣宏之教授に話を聞いた。

山縣 宏之(立教大学 経済学部経済学科 教授)

イノベーション先進地域には
「エコシステム」が存在

――イノベーションが起きる都市の条件とは、どういったものですか。

山縣 まず前提として、経済発展とともに1次産業から2次産業、3次産業の順に就業人口は増えていきます。現代では、製造業をはじめとした中位技術・給与職が減少する一方で、高技能・高給与職と低技能・低給与職が増加します。経営者やマネジメント層、エンジニアなどの高技能職よりも、サービス業などの低技能職のほうがより多く増加しますが、給与が増加するのは高技能職の階層のみです。

イノベーションが生まれる都市には、高技能職、優秀な人的資本が世界中から集まっており、起業家や投資家、企業や大学などによる「地域エコシステム」が形成されています。

例えば米国シアトルにおいて、地域エコシステム形成の中核を担ったのはマイクロソフトでした。同社はシアトルに本社を置き、世界100ヵ国以上からエンジニアや経営人材を集めて競争力を高めました。そして、同社出身者はシアトルで活発に事業を起こし、多数のベンチャーキャピタルやビジネスエンジェルも生み出されました。

同時に、マイクロソフト出身者は行政機関やNPO、大学・研究機関にも入り、都市の政策立案者となってイノベーションを加速させました。波及効果はさらに広がり、直接技術連鎖のない産業やNPO等の社会活動においても、イノベーションが創出されたのです。また、シアトルにはワシントン大学の工学部、情報学部等があり、そうした高水準の大学・研究機関も重要な役割を果たしました。

地域エコシステムは、多様な人や組織による複雑な相互関係を経て形成されます。イノベーションの起点、地域への波及、人的資本の供給。それらが備わっていることが、イノベーションが生まれる都市の条件と言えます。

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