観光地経営に人・カネの課題 世界水準のDMOを実現する方法

観光地経営・マーケティングを担うDMOが形成され、活発な取り組みが始まっているが、一方で、担い手や財源の確保、推進体制などの課題を共有し、組織を世界水準に引き上げる必要がある。2019年2月1日、東京ウィメンズプラザで開催された第3回DMO全国フォーラムの模様を抄録する。

観光地経営の現状と課題

基調講演に登壇した観光庁 観光地域振興部長の平岡成哲氏によると、2018年の訪日外国人旅行者数は初めて3000万人を突破し、その旅行消費額は4.5兆円となった。政府は訪日外国人旅行者数の目標を、2020年は4000万人、30年には6000万人に設定。旅行消費額の目標も、2020年は8兆円、30年には15兆円に設定している。平岡氏は、こうした高い目標を達成するには、旅行客の満足度を向上させ、できるだけ長く日本に滞在してもらうことが重要で、そのためには、DMOを核に、地方でまだ十分に活用されていない観光資源を魅力ある形に磨き上げていく必要があるとした。

観光地域づくりには「認知→来訪→体験・消費」のフローがある。最近では外国人旅行者のほとんどがスマートフォンで情報収集するため、「グーグルマップやトリバゴのような検索エンジンや旅行サイトに載っていない観光地は存在しないのと同じ。逆にそこに載っていれば世界市場に認知されることになります」と、ITを駆使した認知向上策が重要になると述べた。

認知を上げるためにプロモーション施策に力を入れる地域DMOは少なくないが、映像を見て来訪した観光客に失望されるようなことがあれば、悪評が広まる懸念もある。さらに、インスタ映えを狙った『見るだけ』の観光も、集客面では効果があるかもしれないが地元への経済効果は期待できない。平岡氏は「自分たちが見せたいものをプロモーションするのではなく、観光客から選ばれるような体験をしっかり作りこむ努力が必要」と述べた。

「認知面では日本政府観光局(JNTO)も努力しています」と平岡氏。欧米豪で6割を占める訪日無関心層を取り込むため、JNTOでは彼らが海外旅行に求める「パッション(興味・関心)」を分析。デジタルマーケティングを活用し、個々のターゲットのパッションに基づく訪日の魅力を発信するグローバルキャンペーン「Enjoy my Japan」を現在9カ国で展開している。

その一環として、パッションに沿った観光施設やアクティビティ等の観光資源を募集し情報発信の中で活用している。現在、瀬戸内のDMOとの提携では、JNTOが提供したデータをもとに瀬戸内のDMOがプロモーションを展開し、その結果をJNTOにフィードバックしている。JNTOではそれをさらに分析していくという。 将来的には、蓄積したデータを活用して、DMOへのデータ提供やコンサルティングを行うほか、JNTO自身によるプロモーション展開も構想。昨年6月には地方DMOへの窓口として「地域プロモーション連携室」を設置。JNTOはDMOとの連携を従来以上に強化していく。

政府の2019年度のDMOへの財政支援策について、「地方創成推進交付金1000億円は事実上観光交付金。ぜひ活用してほしい」と平岡氏。今年1月から徴収が始まった出国税では500億円の税収を見込む。さらに観光庁では、地域のDMO支援に23億円、公共交通利用環境の革新等の支援に55億円、ICTの活用等による先進的プロモーションに51億5000万円の予算をつけており、「今ほどDMOを中心とした観光地づくりの支援体制が充実している時はありません。ぜひ、この機会を活用して、これまで資金面で二の足を踏んでいた悩みを解決してもらいたい」と訴えて講演を終えた。

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