新しいお金のエコシステムで 社会にインパクトを与える

SDGsビジネスデスクを設置したみずほ銀行。社会課題解決に向けた事業育成を通じ、金融機関としての本業を強化することが狙いだ。

末吉光太郎 みずほ銀行 リテール・事業法人業務部
新規事業推進室 SDGsビジネスデスク 参事役

みずほ銀行が目指すのは、社会に良いインパクトをもたらすビジネスを見極め、資金を含めた成長支援を通じ持続可能な開発目標(SDGs)を達成すること。その一環として着手したのが、ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)だ。SIBは、行政プロジェクトに民間資金を活用する枠組みで、成果連動型の事業委託契約だ。地域住民や国民にとって役立つと考えられるが、行政が100%の資金を負担するにはリスクが高い、チャレンジングな新施策を実現するための枠組みと言える。

資金の流れのエコシステムを構築

SIBは2010年に英国で始まり、日本では2016年度に経済産業省がモデル事業を通じて実装の検討を開始。みずほ銀行はその立ち上げから議論に参加していた。「SDGsでは、自分事として持続的な社会に貢献しつつ自らも成長・発展するために何をするかを考えなければなりません。そこで、新しい銀行の業務にもなりうるSIBに着目しました」と、同社リテール・事業法人業務部新規事業進室SDGsビジネスデスク参事役の末吉光太郎氏は話した。

モデル事業を終え、2017年にみずほ銀行が組成したのは、八王子市における大腸がん検診受診率向上事業のためのSIB。複数年にわたる成果連動型のSIBで、日本初のケースとなった。

実際に事業を進める民間事業者はキャンサースキャン。同社が提供するAIによる個人ごとに最適化した受診勧奨で、大腸がん検診受診率が低い層の受診率を向上させることを、達成すべき成果とした。既に目標値を大きく上回る成果が出ており、2018年10月には、初回の成果報酬支払いが実行されている。

「がん死亡率1位の大腸がんを対象とした取組みという注目度もあり、目指している社会課題解決の事業事例として、来年度以降も拡大する手応えを感じています」と末吉氏が話すとおり、18年11月には、八王子市に続き、広島県域の6自治体という広域圏でも同様のSIB組成が実現した。このケースでは、ミュージックセキュリティーズが仲介するクラウドファンディングによる個人からの出資も加わる。

さらに、再犯防止や里親委託率の向上など、医療分野以外のプロジェクトも、自治体とともに実施の検討を進めている。

ただし、「SDGs達成のための手段は、SIBに限りません」と末吉氏は話す。みずほ銀行のスタートアップ企業への支援策であるM's Salonでは、社会的にインパクトを与える事業を目指すベンチャー向けの取組みも開始した。また、環境に配慮した事業に限定して発行する債券であるグリーンボンドの発行や、ESG(環境・社会・ガバナンス)への取組を行う企業向けの私募債・ローンの提供も開始している。様々な手法を組み合わせ、銀行としてSDGsビジネスのエコシステムを構築していくことが、2019年度の目標だ。

 

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みずほ銀行
TEL: 03-6627-8171
E-mail:sdgs.buisiness@mizuho-bk.co.jp

 

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