2018年10月号

MPD発の新規事業

外国人観光客も大注目 赤坂に拓く静かな「おもてなし」

月刊事業構想 編集部

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米国留学を経て金融業界で勤め、家業である不動産賃貸の経験も基にゲストハウス事業へ。多様なメディアでの取材も相次ぎ、インバウンドとも結びついて注目が高まる。赤坂という土地と結びついた新たな宿泊業の展開を見込んでいる。

河津 考樹(コーテリー 代表取締役 2012年入学・1期生)

不動産を扱う金融のプロとして

河津考樹氏は母親が社長を務める家業の不動産賃貸業を承継することが決まっていた。米国の大学を出て仕事を考える際に、まずは業界を知ろう、と不動産会社に就職。小さな不動産を購入して運用しバリューアップする「アセット・マネジメント」を主に担当した。5年ほどの在籍期間の最後には上場を経験し、インベスターリレーションズ(IR)の部署にも配属されていた。

「最初の職場で色々学んだなかで更にステップアップしたいと思い、外資系の証券会社に転職しました」。銀行の免許も持っているプライベート・バンキング部門の不動産投資信託を扱い、ポートフォリオ・マネジメントを扱っていたという。

扱う金額や地域も前職に比べて拡大したが、金融危機後に、尊敬する上司や同僚が次々と辞めるなかで「潮時」を感じ、再び退職に至る。

新たな学びを得た大学院生活

2度目の退職後しばらくは家業を手伝っていたが、「与えられるもの」としての家業と別に、自身の事業を興すための新たな発想を学びたいと、当時開学直前だった事業構想大学院大学の門を叩く。

「当時はまだ修了生(先輩)もいませんし、少人数で、同期生の間柄は自ずと濃いものとなりました。またファイナンスとは違う分野を学びたいと感じていましたが、経営系大学院とは違い、グループに宣伝会議というマーケティング専門の版元を持つ同大学は、自分に合っていると感じ入学を決めました」

リスクとリターンなどの金銭的価値のみで全てを測ることなく、「社会課題解決に貢献する」事業を有る買うカリキュラムは新鮮だった。「相原憲一先生(一般社団法人絆塾 代表理事・客員教授[当時])のソーシャル・イノベーション論など、純粋なお金儲けとは異なる分野に目を開かれました。お金の多寡だけでお客様を惹き付け喜ばせることはできません。体系的に知ることで、自分の今いる立ち位置と将来の課題が見えたのは、良かったと思っています」

赤坂で開業した一号店

やがて河津氏は赤坂にゲストハウス兼喫茶店・バーとして「Kaisu」を開業する。店名の由来は、日本語の「会する」になぞらえたもの。旧料亭『島崎』の内装や調度品を活かし、世界中の人々か集い語らう場を提供するものだ。「折しもインバウンドに火が点き、留学経験を活かして英語を使う環境で働きたいとも思い、ゲストハウスを始めました。様々な視察とリサーチを重ね、かつ競合の激しい地域を避け開業を考えていたところ、偶然にも不動産会社を営む赤坂の知人から旧料亭である現在の物件を紹介されました。建築士やwebデザイナーなどのプロの協力を得ることはありましたが、それ以外は全て、共に事業を興した者と失敗を重ねつつ切り拓いてきました」

InstagramなどSNSは設けるが(https://www.instagram.com/kaisuhostel/)、過度に広報を打つことはない。むしろBooking.comなどのオンライン宿泊予約サイトでの口コミで評判・注目が高まり、様々なメディアからの取材を受ける機会が増え、それらが自ずと次の集客につながる、という循環が生まれている。

Kaisuの外観。表通りを入った閑静な路地に立地

SNS投稿では、店頭で、様々な宿泊客・旅行客が記念写真撮影に興じる模様も

ゲストハウスの内装。ベッド脇に荷物置き場のスペースを充分に設け、体格の大きな欧米人に配慮した余裕有る高さとするなど、快適さを追求している

質にこだわり快適さを追求

料亭をベースにしたドミトリーが主体であるが、余裕のある空間を確保している。「集客効率だけを考えれば、スペースを節約するほど多くのお客様を泊めることができます。最近のゲストハウスは壁やカーテンなど、プライバシーの確保も重視されているものの、快適さが損なわれることは否めません。背の高い欧米人でも天井に頭を打たなくとも良いように高さを確保し、荷物置き場のスペースも別に確保するなど、満足度を高める工夫を凝らしています。結果として宿泊費の高さには反映されますが、質を期待するお客様からは高い評価を頂いています」(河津氏)。料亭の時に使われていた照明器具や木造建築の資材を随所にそのまま用いるなど、昔ながらの設えと、流行を追い過ぎないデザインで、空間に「落ち着き」とをたらしている。

店舗にはカフェを併設し、近隣を訪れる観光客にも憩いの場を提供している。「シンプルですが、従業員のホスピタリティを高め、キチンと行き届いた清掃を行うことで、宿泊・立ち寄り双方のお客様に滞在時の満足度を高めるようにしています。先にお話しした予約サイトでの評点が良くも悪くも評価を左右しますので、普段からの地道な業務を、従業員同士で徹底し心がけています」。

地元と関わり、更に事業を拡大

河津氏は今、2019年迄に2軒目をオープンすべく新しい物件を探し始めている。カフェ併設の形式にするかは未定だが、ホテル寄りのホステルの構想を練っている。

「最近はワーケーションという言葉も生まれているように、仕事(ワーク)と余暇(バケーション)を融合させた時の過ごし方が広まっています。まだ漠然としたアイデアの段階ですが、旅をしながら仕事をするという営みに対して何か新しいサービスを提供できるとしたら、新事業の切っ掛けになると思います」。

今後は更に、赤坂のまちとのつながりも深めていきたいという。「当初はこの立地が自分でも意外でしたが、由緒・歴史ある古い街並みで、地元の祭事や町内会も大変盛んです。いずれ私たちも何らかの貢献ができればと思っています」(河津氏)。

「事業構想大学院大学の同期生と知り合って得た関係性はこれからも続くと思います。修了後の今だからこそ、共に何かを始められるかもしれない、と期待しています」(河津氏)。

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