AI・IoTで匠の技を未来へ 強い「ものづくり大国」日本を作る

AI、IoTを活用し、工場などの生産性向上につなげるソリューションを提供するスカイディスク。創業支援に熱心な福岡市に本社を置く同社は、日本が世界に誇るものづくり現場の匠の技を形式知化し、国内のみならず、世界の工場にイノベーションを起こそうとしている。

橋本 司(スカイディスク 代表取締役・最高経営責任者CEO)

高い技術力と優れた技能で世界の先頭を走ってきた日本のものづくりの現場は、担当者の「属人的な能力」に支えられてきた側面がある。しかし、あまりに個人に依存しすぎたことと、高齢化や労働力不足という社会状況の変化により、ものづくりメーカーは今、生産性の向上や省力化、そしてカン・コツのデジタル化をどのように実現するかに頭を悩ませている。

スカイディスクはこうしたものづくりにかかわる課題をAIやIoTを活用することで解決する福岡のスタートアップだ。提供するサービスは、ヒアリングを通じて抽出した課題をもとに、センサデバイスを開発。センシングしたデータの収集から解析、更にはデータのフィードバックによる改善までをワンストップで提供するというもの。

競合企業の参入が懸念されることもあったが、スカイディスク代表取締役・最高経営責任者CEOの橋本司氏は強みとして、「AIに関わる人材の層に厚みがあり、研究開発とビジネス開発の双方に注力し、大手企業より動きが速く、小回りがきくところ」を挙げ、この強みをいかして事業を展開することでAI・IoTに関するワンストップサービスを提供する企業の中でトップランナーの地位を確立している。

広がるAI・IoTのニーズ

スカイディスクは、特に設備保全や歩留まりの向上、検品といったテーマを得意とし、現場のニーズから「スマート聴診棒」というサービスも生み出している。

スマート聴診棒は人の聴覚では聞き取れない音まで聞き取り、分析することができる

生産現場では大きな機械装置には保全員という熟練のスペシャリストがいて、機械から発する稼働音から不具合を感知し、メンテナンスにつなげている。聴診棒とは、このときに使われる機械に棒を当てて増幅される音を聞くための道具だ。これまでは、熟練者が聴診棒を使い、不具合がないかを点検していた。しかし、近年はこうした熟練者の退職も進み、新人がスマホを通して辞めた元社員に音を聞かせて判断していたケースがあったという。このようなニーズに対応するために、AIの力を利用して生み出したスマートフォンアプリが「スマート聴診棒」だ。設備機器の巡回点検の際、機器にスマートフォンをかざすだけで手軽にかつ確実に異常を検知できる。「現場の職人の中でもスペシャリストの高齢化が急速に進んでおり、匠の技をいかにAIに置き換えていくかが喫緊のテーマです」と橋本氏はいう。

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