ワイン、荒海にジオパーク 下北半島の資源を生かした戦略を検討

自治体の情報発信の理想形を、複数の自治体と企業が議論するシティプロモーション研究会。研究員が青森県むつ市を訪問し、2日間のフィールドワークを実施した。下北半島の自然環境と海の恵みなどを活用し、住民と観光客のそれぞれにアピールする戦略を探った。

サンマモルワイナリーは現在、自社の10ヘクタールのブドウ畑で生産したブドウを使ってワインを醸造している

地域の理想の未来を作り上げるために、貢献できるシティプロモーションとはどんなものか。事業構想大学院が主催し、3自治体・3企業が参加しているシティプロモーション研究会は、フィールドワークを開始した。最初の訪問先は、青森県むつ市。下北半島の中心都市となる同市では、「広域連携による観光プロモーション」を研究の中心テーマにしたいと考えている。

むつ市でのフィールドワークは2日にわたって実施し、1日目は同市の観光プロモーションで目玉になりうる候補事業を視察した。訪問したのは、サンマモルワイナリー、北の防人大湊ボランティアガイド、下北ジオパーク、海峡ロデオ大畑/イカす大畑カダル団、北彩漁業生産組合の5カ所だ。その後、合計5時間以上のディスカッションをし、むつ市のプロモーションの方向性を探った。

下北半島のテロワールを生かす

最初の訪問先は、下北ワインを製造している、サンマモルワイナリー。10ヘクタールのブドウ畑で収穫したブドウを下北ワインとして醸造し、販売している。1980年代のリゾートブームの際、ゴルフ場などレジャー施設を建設する予定だった土地を、バブル崩壊後にブドウ畑に転用。メルロやピノノワール、ライヒェンシュタイナー、シュロンブルガーなどのブドウ品種を20年にわたって栽培し続けてきた。

海外のワインコンクールで賞を取るなど、品質面での評価は高いが、青森の冷涼多湿な気候のため、1本当たりのブドウの生産量は少ない。栽培面積を広げることで、ブドウの生産増を図りたくても、過疎化が激しい地域でもあり、ワイナリーの人手を増やすことは容易ではない。

そこで、むつ市と協力して、むつ市Vignoble(ヴィニョーブル)計画を立ち上げた。これは、むつ市の市民にブドウの苗を配布して植えてもらい、実ったブドウは買い上げ、市民の所得向上とワイン材料となるブドウの確保を両立しようというものだ。むつ市では、家庭で消費する野菜を十分に賄える広さの畑を持つ市民が少なくないことに目を付けた。2018年度は300本の苗を配布し、2019年度は配布する苗の数を2000本にまで増やす計画を立てている。

サンマモルワイナリー代表取締役社長の北村良久氏は、「ブドウを栽培する農家を増やして素材を確保するようにしないと、地元産原料のワインを作れなくなる。そのために市民の協力を仰ぎたいと考えました」と危機感を語った。

同ワイナリーのブドウ畑は、むつ湾を望む美しい丘陵地帯にある。この環境を生かして、秋の収穫期に手伝いのボランティアを募集することや、ITを用いたブドウの管理などのアイディアが、研究会のメンバーからは提案された。また、むつ市では市民がワインに親しむ機会を増やすため、地産地消の取組を強化する考えを示した。

ワイナリーと同様に、下北半島の地形や自然環境を生かした観光資源として、むつ市が注目しているのが下北ジオパークだ。下北ジオパークは、自然環境と住民の環境保全への取組が高く評価され、日本ジオパーク委員会により日本ジオパークに認定されている。むつ市企画政策部ジオパーク推進課でジオパーク推進員を務める石川智氏は、「住民の地元愛を高めることと、観光客を誘致する効果の両方を狙っています」と説明した。地元の注目も高く、ジオパーク認定が決まる際には、400人の住民が待機して、市長が結果を通知されるのを待ち、決定後はお祝いになったという。

住民の気持ちを高める活動

次に、研究会のメンバーは、大畑町魚市場に移動し、海の恵みを生かした地域おこし現場の話を聞いた。まずは、大畑町で漁船と漁を観光資源としようとしている海峡ロデオ大畑/イカす大畑カダル団だ。研究会に対し、活動を紹介した長岡俊成氏は、海峡ロデオ大畑事務局長とイカす大畑カダル団代表を兼任している。

海峡ロデオ大畑は、地元の漁師などが集まった地域おこし団体。イカす大畑カダル団も、地域の活性化を目指す人々が、緩やかなつながりでカフェなどを運営している団体だ。海峡ロデオ大畑では、津軽海峡の荒波をロデオのように乗りこなす漁師の生きざまを体験するツアーを、2018年4月に初めて敢行した。1回目のツアーは、北東北を中心とした近隣からの参加が多かったが、現在企画中の2回目のツアーは全国から参加者を集めたい考え。

長岡氏は、東京からUターンし、地域で縁のある人を集めて関係を構築しながら、イベントを開催している。大畑町は、2005年にむつ市に編入されたが、その際の紆余曲折でまちづくりへの意気が上がらない雰囲気があったという。「地域での発言権を得て地元を活性化するために、インパクトを与える活動をすることを心掛けています」と同氏は話した。

むつ市のプラザホテルむつで、研究員が2日で5時間以上、プロモーション戦略をディスカッションした

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