蒲島郁夫・熊本県知事が語る 「創造的復興」への挑戦

高校卒業後、地元の農協へ就職。米国留学、東京大学教授等を経て熊本県知事になった異色の経歴を持つ蒲島郁夫知事。くまモンの政策に代表されるように、自ら行動で示すことで、チャレンジする土壌・集団をつくりあげた蒲島知事が掲げる「創造的復興」について話を聞いた。

蒲島 郁夫(熊本県知事)

――熊本が目指す「創造的復興」について教えてください。

2016年4月に発生した熊本地震の後、私はすぐに「復旧・復興の3原則」を示しました。第1原則は、被災された方々の痛みを最小化すること。第2原則は、単に元あった姿に戻すだけではなく、「創造的な復興」を目指すこと。第3原則は、復旧・復興を熊本の更なる発展につなげることです。

「創造的復興」を英語では"Build Back Better"といいますが、「震災前より良いものを創る」という哲学を基本に置いています。ただ、言葉にするのは簡単ですが、実践するのは難しく、それを可能にするためには様々な条件があります。

一つ目は、「迅速さ」です。人命救助、食料・水の確保、避難所の確保と、様々なフェーズに応じた迅速な災害対応が必要なことはもちろん、方向性を示すことにも迅速さが求められます。最初の人命救助の段階で「3原則」を示すことは大変勇気が要るものですが、これをいち早く示すことで、その後の展開が大きく変わってきます。 

二つ目は、「過去の経験を活かすこと」です。2012年7月に発生した熊本広域大水害で阿蘇地域が大きく被災しましたが、この災害からの復旧・復興にあたって、農地の大区画化などを含む創造的復興の取組みを進めていました。この時の経験があったからこそ、熊本地震の際にもいち早く実践することができたのです。

三つ目は、「復興の哲学」です。私は、熊本地震の2日後に、盟友である五百旗頭真氏(熊本県立大学特別栄誉教授)に電話し、「くまもと復旧・復興有識者会議」の座長就任を依頼しました。約1カ月後に開催した会議では、熊本が目指すべき姿や全国に教訓を発信する方策など、復興の哲学を議論していただき、県に提言をいただきました。創造的復興の理念をさらに強化することができ、また、こうした基本的な哲学があったからこそ、発災から約3カ月で「復旧・復興プラン」を策定し、その後の着実な復旧・復興につなげることができたのです。

四つ目は、「職員ひとりひとりがチャレンジ精神をもつこと」です。私は「皿を割ることを恐れるな」という言葉を使います。「皿を割ってもいいから、とにかくたくさん皿を洗おう。リスクを恐れずにチャレンジしよう」という意味で、私はこのメッセージを職員に繰り返し伝えてきました。その結果、熊本県庁の職員は挑戦する集団に変わりました。職員のチャレンジングな行動が、創造的復興の取組みを支えているのです。

そして今、「創造的復興に向けた重点10項目」をはじめとする様々な復旧・復興の取組みに、私を先頭に、県職員一丸となって挑戦を続けています。

全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り78%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。