2017年4月号

ふるさとグローバルプロデューサー

愛媛シルクプロジェクト グローバル時代における地域創生

月刊事業構想 編集部

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地域ブランドを国内外に展開するためには、地域の様々な立場の方々を理解し、思いを結集した上で、形にしなければならない。愛媛県西予市で進む「愛媛シルクプロジェクト」のキーパーソンが一同に会し、海外展開も視野に入れた地域ブランド開発のポイントについて議論を行った。

登壇者は右から、管家一夫(愛媛県西予市長)、八十島一幸(愛媛県営業本部長)、河合崇(株式会社リバースプロジェクトトレーディング代表)、龜石太夏匡(リバースプロジェクト代表)、泉谷昇(ふるさとグローバルプロデューサー育成支援事業研修生)、田邉敬詞(株式会社ジェイアール東日本企画ソーシャルビジネス開発局次長)、陣山繁紀(中小企業庁中小企業構造研究官)、山本聖(ふるさとグローバルプロデューサー育成支援事業事務局)

夢を現実に近づける「巻き込み力」が不可欠

かつて世界一の生糸生産国であった日本も、この四半世紀で約95%が減少し、国内養蚕業は激減している。そのような中、海外での評価も高い愛媛県西予市の生糸に着目し、愛媛県の養蚕業を盛り上げたいと考えたのが、大手商社の繊維原料部門に9年間在籍するなど長く繊維に携わってきたリバースプロジェクトトレーディングの河合氏だ。2016年10月より、河合氏がリードし、泉谷氏をはじめとする「ふるさとグローバルプロデューサー育成支援事業」に参加した7名の研修生が協力する形で、愛媛シルクプロジェクトを推進、2017年1月にはタオルを完成させ、ハワイでのテストマーケティングまでこぎつけた。明確なビジョンを持ち、具体的な事業計画に落とし込まれた愛媛シルクプロジェクトは、昨年11月に伊予銀行が主催したビジネスプランコンテストで最優秀賞を受賞、地域の期待は日々高まっている。

しかし、「モノづくりに関しては、ゼロからではなく、マイナスからのスタートでした」と泉谷氏が振り返るほど、地域の巻き込みで壁に当たり、プロジェクト開始当初は苦戦を強いられた。重要なステークホルダーである地元のシルク博物館に協力を呼びかけると、「質が良いのは言われなくても知っている。しかし、今さら何をしたって変わらない」と、返事はつれないのだ。

そこで、泉谷氏は自らが運営する市民大学(いよココロザシ大学)で西予市野村町とジオパークを訪ねる1泊2日の研修旅行を企画するなどして信頼関係を築きながら、地域とシルクに関する知識を深めていくことに。西予市の管家市長は、「現地に行き、地元の人と一緒に動いてくれたことが、館長たちの気持ちを動かした」と、絆づくりの大切さを語った。

一方で、地域を巻き込み、夢を語れても、実現できなければ意味がない。大手企業のような大量生産の商品以外をアメリカで販売する場合、人に語れるストーリーを有することが、一般にポイントの一つになる。リバースプロジェクトの龜石氏は、「デザインが良い、クオリティが高いのが当たり前になったいま、日本の地域ブランドがグローバルに打って出るために大切にすべきことは、なぜ、その商品が生まれることになったかという背景や概念です」と地域を巻き込んだ上で、モノではなく、コトを商品の価値へと転換することの重要性を説く。河合氏も「プロデューサーが考えるべき商品デザインとは、愛媛産のシルクは、京都産や富岡産のシルクと何が違うのか。その背景にあるストーリーを引き出し、目に見える形にすること」と指摘する。

管家市長によれば、伊予糸には伊勢神宮の式年遷宮の御料糸として献納されてきた歴史がある。その歴史を途絶えさせないためにと、市では年間5000本ずつの桑を植え、新規就農者を含む養蚕農家を支援する5カ年計画を進めている。「行政としての願いは、養蚕業の復活が市民生活を豊かにし、市民がそれを誇りに思ってくれること」と語る。

専門人材や県・国との連携もポイントに

市区町村や中小企業が地域ブランドの海外販路開拓を目指す場合、人材および資金確保が課題となりがちだ。地域のプロデューサーは常日頃からいざというときにパートナーとなりうる専門的知識・スキルを有する人を見つけておくことが大切であり、専門人材を有する大手企業や、県や国との連携も視野に入れておきたい。

本シンポジウムでは、「ふるさとグローバルプロデューサー育成支援事業」を主催するジェイアール東日本企画の田邉氏、先行してシルクを活用した地域創生に取り組んでいた愛媛県庁の八十島氏、政策的な観点から地域ブランド開発を支援する中小企業庁の陣山氏の3名から、連携の在り方について、それぞれの立場から意見が述べられた。

ジェイアール東日本企画の田邉氏は、鉄道や駅ビルを有するJR東日本グループの広告会社として地域創生に力を入れており、同社としても20地域以上で、地域の新しい事業を立ち上げる支援を行っていることを説明。その上で、「100年先も地域の皆様が笑顔でいられるようにするには、人づくりに加えて、継続性、稼げる仕組みづくり、主体性を加えた4点を意識し、自立自走を目指して欲しい」と語り、グループが有する資源を活かしながら、新たな価値を地域社会と共に作り貢献していきたいと意気込む。地域ブランド化された商品・サービスの販路を開拓するためにはストーリーを最適な形で顧客に伝える必要があり、広告会社として地域に果たすべき役割はますます大きくなっている。

また、愛媛県庁の八十島氏は、人口が減少し、物が売れない時代において、地域を元気にするために、外からの誘客と、内なる良いモノを外に売っていかなければならないと説明する。そのうえで、「最終目的は、モノを売ることではなく、愛媛で暮らしたい、観光したいと思ってくださるファンを増やすというひとづくり。モノ通じて何を訴えるかを大切にしたい」と話すように、スタートは小さなプロジェクトでも、県の狙いとマッチすれば、県と大きく連携してくことは可能だろう。

最後に、中小企業庁の陣山氏は、「自分たちがやりたいことと、その地域が持っている資源とを、いかにフィットさせていくかを、周囲を巻き込みながら団体戦で考えていくのがプロデューサーの役割」と語る。当初は中小事業者の支援を行っていたが、地域一丸となって取り組まなければ成功しないことを考慮し、2015年8月からは地域として認定を受ける「ふるさと名物応援宣言」で地域ブランド化を後押ししており、ぜひ活用してほしいと呼びかけた。この制度は、市町村単位で地域資源を発掘し、「ふるさと名物」として認定を受ければ、国の補助などの優先措置が受けられる仕組みである。国という外部評価を得ることができるため、地域の関係者を巻き込むうえで、大きな力になるはずだ。

愛媛シルクプロジェクトのように、多様な立場のキーパーソンを巻き込み、一つでも世界に羽ばたく地域ブランドが生まれることを期待したい。

パネリストの発言に真剣に耳を傾けるシンポジウム参加者

*ふるさとグローバルプロデューサーは、ふるさとプロデューサー等育成支援事業において、育成しています。当事業は、中小企業庁の補助事業として株式会社ジェイアール東日本企画が実施しています。同社は、カリキュラムの作成等を学校法人日本教育研究団事業構想大学院大学に委託しています。

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