2016年7月号

2020年に向けた構想計画

五輪ビジネスモデル~イノベーションのクリティカルポイント~

岸波 宗洋(事業構想大学院大学 教授、事業構想研究所所長)

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東京オリンピック・パラリンピックイヤーまでおよそ4年となった。有意義にイノベーションへ向けた4年間を画策しなければならない。「ファーストモデルは必ず失敗する」ことを前提に、工程管理する必要がある。つまり、現実的にビジネスローンチさせるタイミングは、既に3年以内のリードタイムにおいて可能であり、五輪ビジネスへの参入は、即時決断をしなければならない、ということになる。さて、五輪ビジネスの策定において、いくつかのクリティカルポイント(重要な課題、取り組み)がある。

(1)革新性と多様性を創造する

オリンピックのビジネスチャンスとは、革新性と多様性への許容、である。必ず、各機会において技術的な先進性や文化的な多様性をプレゼンし、国家としての民度や優秀さを競う側面が否めない。これは、単に進化することを意味するのではなく、退化することもその答えである。隈研吾氏の考案したスタジアムデザインが採用された意図が、東京オリンピック全体のビジネスコンセプトにも繋がるべきだろう。

(2)社会的価値の変化を創造する

現在のグローバル社会において、既に価値提示されているビジネスをオリンピックビジネスにすることはいささか疑問である。自民党IT戦略特命委員長である平井卓也議員によれば「オリンピックはビジネスショーケース」であり、そこを起点に世の中が変わっていく、グローバルスタンダードを画策するチャンスでもある。

(3)パラリンピックの新価値を創造する

国力や民度をプリミティブに競う中で、東京パラリンピックを如何に世界的ムーブメントへ昇華するか、は大変重要なポイントである。身体・知的障がいを持った人々が一同に集うのもこの機会であり、世界に発信するビジネスを検討してほしい。

(4)グローカルビジネスを創造する

東京オリンピックという世界が注目する一大イベントを通して、日本の地域性をいかにプレゼンするか、が重要である。日本の地域資源は、海外においては希少性の高い価値を多分に含んでおり、課題である「認知度」を高めることでキャッシュフローを獲得することは充分可能である。

(5)アフターオリンピックを創造する

五輪ビジネスとは、オリンピック機会に儲ける事、ではない。

オリンピック機会において、事業構想の発露や起点を見出し、普遍的、恒常的にビジネスを成長させること、である。1964年の東京オリンピックにおいて、首都高速網が整備されることで、東京を中心とした物流システムが確立され、第二次高度経済成長の原動力となり得たことを考えて欲しい。

このように、五輪ビジネスを語る上で普遍の志向が存在するわけだが、2020年は、やはり中心的コンセプトに「グリーンオリンピック」を掲げるべきだと思う。前の東日本大震災や福島第一原発事故を経験した国だからこそ、技術の粋を集めるイベントではなく、許容・融和を通した精神的成熟度の高いオリンピックビジネス機会に昇華すべきではないだろうか。これを前提に考えると、前述したIT戦略特命委員会が毎年発行する提言書「デジタルニッポン」にしたためられている「3O(トリプルオー=思いやり、おもてなし、おせっかい)」の精神性が重要であり、日本人の奥ゆかしさ、きめ細やかさ、心遣いにおいてサービスを徹底的に昇華させていくことに、ひとつのサクセスポイントを見出すことができるだろう。

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  2. 事業構想大学院大学 事業構想研究所 経営相談窓口
  3. e-mail. jken@mpd.ac.jp

 

 

新事業のアイデアを考え構想する

事業構想大学院大学は、社会で必要とされる事業の種を探し、事業構想を考え構築していくMPD(事業構想修士)を育成する、クリエイティビティを重視した、従来の枠を超えた新しい社会人向け大学院大学です。

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