宅急便でアジア圏へ輸出 農水産品輸出の物流プラットフォーム

輸送に時間とコストがかかる。小口や保冷に対応していない。輸出混載事業者が少ない――。こうした地方の事業者が抱える農水産品輸出の課題を解決するのが、ヤマト運輸の宅急便ネットワークだ。同社は三重県と連携し、県産品のアジア圏輸出を本格化させている。

1976年、民間で初めて小口配送事業に参入し、宅急便という画期的なサービスを開発したヤマトグループ。以降、日本全国を網羅する宅急便ネットワークを構築し、宅急便は日本人の生活に欠かせない社会的インフラとなった。そして、宅急便誕生から40周年を迎え、グループは本格的に物流サービスの国際化に乗り出している。

2000年の台湾を皮切りに、シンガポール、上海、香港、マレーシアで宅急便サービスを展開し、アジア市場に宅急便のネットワークを広げている。ヤマト運輸執行役員で国際戦略室長の梅津克彦氏は、アジアへの本格進出を次のように語る。「スキー宅急便など、今やおなじみとなったヤマト運輸の革新的なサービスは、6万人のセールスドライバーが現場で吸い上げてきたお客様の困りごとから生まれました。マーケットのグローバル化が進む中、アジアを一つの面として捉えれば、日本にしかないこの宅急便サービスはアジア全域にボーダレスに提供されて然るべきです」

アジア新興国が生産国から消費国へとシフトし、国民の生活水準が向上していく過程においては、「商流だけでなく、物流もまた高品質なサービスが求められている」と梅津氏は言う。それは、「日本の高品質で旬の食材を、新鮮なまま安心・安全に玄関まで届けてほしい」という消費者ニーズだ。三重県で採れた伊勢エビが翌日にはシンガポールの家庭の食卓に並ぶ――。そんな物流革命が東アジアの中心地・沖縄から起こり始めている。

農水産品をアジアへ輸出する物流プラットフォームを構築

2013年、ヤマト運輸は国内最強の宅急便ネットワークと国際貨物基地「沖縄国際物流ハブ」を活用することで、アジアへの最短翌日配送を実現する世界初の国際間一貫保冷小口輸送サービス「国際クール宅急便」をスタートさせた。そして今年1月、アジア圏への販路拡大を目指す三重県内事業者を支援するため、三重県と販路拡大に向けた連携協定を締結し、取り組みを進めている。

このプラットフォームを活用するメリットは大きく2つある。1つは、国際輸送にかかる時間の大幅短縮だ。中部国際空港を経て那覇空港から輸出すれば、出荷翌日の午後にアジア各都市に届くようになり、国内配送と変わらないスピードを実現できる。もう1つは、冷凍・冷蔵となる農水産品も日本各地から、1個口から輸出できるようになることだ。

「アジアの消費者には訪日中に食べて美味しかった食材を、お取り寄せしてもう一度食べたいというニーズがあります。一方、日本の事業者にはリンゴ1個からでも海外に売っていきたいという思いがあります。そうした両者をつなぐため、シームレスな物流で応えることが私どもの使命です」

三重県には伊勢エビやアワビ、松阪牛など魅力的な県産品が揃うが、いずれもバルクで売るケースが多かった。しかし、これらの農水産品を少量多頻度で新鮮なまま海外に輸出できるようになれば、それだけ事業者の利益率は高まる。つまり、日本とアジアをドア・ツー・ドアでつなぐ物流プラットフォームの構築により、事業者に幅広い売り方の選択肢が提供できるようになったのだ。

「日本の最大の強みは、季節ごとに異なる農水産品が収穫でき、その各々に旬という食べごろがあることです。4つの季節と農水産品を掛け算すれば、提供できる品は膨大な数に及びます。また、地方にはその土地でしか消費されていない眠る宝物があります。それらを物流によるイノベーションで掘り起こすことができれば、インバウンド市場はますます拡大していくでしょう」

梅津 克彦 ヤマト運輸 執行役員 国際戦略室長

国内輸送費の助成制度で販路拡大が低コストに

ヤマト運輸が県産品の販路拡大に向けて自治体と連携協定を結ぶのは、青森、熊本、愛媛、宮崎に次いで5県目であり、その後も秋田など広がりを見せているが、梅津氏は「とりわけ三重県は首長、三重県産業支援センター、事業者という3者のチームワークが取れている。また、事業者の輸出拡大を支援する全国初の助成制度が用意されており、地方創生に向けて並々ならない意気込みを感じます」と感想を述べる。

沖縄県では、航空会社のコンテナスペースを県が借り上げ、沖縄県内事業者に提供する「航空コンテナスペース確保事業」を実施している。三重県と沖縄県が連携し、これを活用することで、三重県内から那覇空港までの国内輸送費を最大50%まで助成することができる。また、コンテナを利用せず、集荷から海外発送までのすべてをヤマト運輸に一任する場合も、国内輸送費の助成が受けられるため、事業者にとってはコストを大幅に抑えられる点も魅力的に映るはずだ。

また、ヤマト運輸では輸出支援セミナーの開催や輸出時に必要な書類の作成など事務手続きの支援も行っており、県内事業者が海外とのビジネスを安心して展開できる仕組みづくりにも精力的に取り組んでいる。

「海外に物流拠点を持たない事業者も、宅急便ネットワークによって商圏を拡大できるよう、これからもシームレスな商流にシームレスな物流で応えていきます」

沖縄国際物流ハブを活用した三重県産品輸出事業の概要

出典:沖縄国際物流ハブを活用した 三重県産品輸出支援事業 実施概要より編集部作成

 

お問い合わせ

  1. ヤマト運輸株式会社
  2. URL:http://www.kuronekoyamato.co.jp/chiikishien/top.html
  3. TEL:03-3541-3411(代表)

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