「顧客の経済性」に新事業のヒント コスモ石油の戦略を読み解く

なぜ、コスモ石油は、ガソリンスタンドで自動車のリースを始めたのか。顧客にとっての「経済性の向上」という視点から、そのビジネスモデルを読み解くことで、同社の戦略、強みが見えてくる。
文・山田英夫 早稲田大学ビジネススクール教授

 

コスモ石油は、既存のガソリンスタンド店、販売スタッフというインフラを活用し、個人向けカーリース事業に進出 photo by asedaisuke

Case Study

コスモ石油は、全国に約3100ヵ所のガソリンスタンドを持ち、日本のガソリンスタンド業界で3 位に位置している。同社は2011年4月から「コスモスマートビークル」と呼ぶ個人向けの自動車のリース事業の本格展開を開始した。利用者はコスモ系列のガソリンスタンドで、自動車のリース契約ができる。車種は国内全メーカーの全車種が対象であるが、実際には、軽自動車が6割を占めている。

リース料金を払えば、頭金や初期費用はかからず、ガソリン代、自動車任意保険料、洗車代を除くほとんどの費用(税金、車検、オイル交換、タイヤ交換、バッテリー交換)が料金に含まれており、利用者にとっては、車に関する面倒な支払いを考えなくて済む。また契約満期時には、乗り換え、買取り、延長、返却の中から選ぶことができる。

コスモ石油は規模の経済性を活かして、自動車の販売会社やリース会社と交渉し、有利な条件を引き出している。また、車の仕入に関しては、自動車メーカーからではなく、地元の自動車ディーラーから仕入れて、リースしている。

もし自動車メーカーから仕入れた車両をリースするビジネスモデルであれば、地元の自動車ディーラーとの競合になり、実績のない同社は苦戦を強いられていたかも知れない。しかし、地元のディーラーから仕入れることによって、ディーラーにとっては、新しい販売チャネルが追加されたことになり、お互いWin-Winの関係を築いている。

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