物流・交通などの社会資本整備が鍵 宮崎の「強み」「弱み」を分析

宮崎県は一次産品の「ブランド化」と「6次産業化」で多くの実績とノウハウを持つ。一方で、社会資本整備の遅れが、観光振興や産業集積のアキレス腱となっている。宮崎県の課題とポテンシャルを分析し、今後の成長の方向性を探る。

“日本創生の原点”宮崎県

宮崎県は、“天孫降臨神話の地”である。「記紀」によれば、天照大御神から授かった「三種の神器」を携えて、邇邇藝命が、天児屋命らの神々と共に、高天原を出発。猿田毘古神の道案内を得て、降り立った土地こそが、筑紫の日向の高千穂(現・宮崎県高千穂町付近)であった。

言うなれば、高千穂は“日本創生の原点”である。しかし、ここは古来、宮崎よりも熊本との結びつきが強く、それは現代に至っても変わらない。日本有数の景勝地「高千穂峡」(国の名勝、天然記念物指定)に向かう人々は、熊本空港から空港連絡バスで直行するか、あるいは阿蘇山や黒川温泉など熊本県内観光とのセットで訪れるケースが多い。経済圏という点から言っても「熊本経済圏」に含まれる。

そして、実に、こうした点にこそ、宮崎県が抱える独特の難しさが存在している。

完熟マンゴーをはじめ、一次産品の育成ノウハウの蓄積は、宮崎県の発展に向けた大きな武器

基盤整備遅延が“アキレス腱”

同県は年間快晴日数全国1~3位を誇るなど、気候的にもたいへん恵まれたところである。

北から延岡市、宮崎市、都城市・日向市という“3大都市圏”を有するが、森林面積比が全国第9位と高く、山間部が多いなど自然条件の厳しさもあり、人々の生活圏はより細かく分断されている。そしてしばしば、隣接する他県との間に、生活圏・経済圏を形成している(上記の高千穂町のように)。

本来であれば、散在するそれら県内各地域を有機的に結ぶ交通網が張り巡らされているべきであろう。

ところが、鉄道は日豊本線を核とするJRのみで、私鉄網は存在せず、しかも、そのJRも基本的に“単線”である上に、日本で唯一、県内全域においてIC乗車券が使えないなど、他県と比べ整備の遅れが目立つ。九州新幹線の全線開通により勢いづく九州西部地域との「九州内東西格差」は歴然である。

一方、バス交通は事実上の“一社独占”で競争が存在しない。

航空に関しては宮崎空港があり、ソラシドエアがここを本拠にしているが、県西部の住民にとっては熊本空港が、県南部の住民にとっては鹿児島空港がより近く便利ということもあり、宮崎空港の利用者は限定されるようだ。

港湾についても、油津など沖合・遠洋漁業の拠点港はあるものの、県としてのグローバル戦略を担えるレベルの国際港湾は存在しない。

また、高速道路網など県内の道路整備は総じて遅れており(2015年3月にはようやく、東九州自動車道「宮崎~大分」間が開通した)、以上のような物流・交通面での社会資本整備の遅れが、“宮崎県経済発展上のアキレス腱”になっていることは否めない。

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