2015年6月号

プロジェクトニッポン 宮崎県

社員の半数はUIJターン者 宮崎発のITベンチャー、アラタナ

山本稔(アラタナ取締役副社長、最高執行責任者(COO))

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UIJターン者が社員の半分以上を占める、宮崎市のITベンチャー企業「アラタナ」。「宮崎に1000人の雇用をつくる」という目標を掲げ、全国から優れた人材が集まる。地方で伸びる企業の条件とは何か。創業メンバーの一人で副社長の山本稔氏に聞いた。

山本稔(アラタナ取締役副社長、最高執行責任者(COO))

大容量データのやり取りを可能にする通信環境が整い、これまで東京など都市圏でなければ成り立たなかった仕事が、地方でも可能になった。地方にUターンし、趣味を楽しみながら仕事をするというライフスタイルは確実に増えている。

アラタナ副社長で創業メンバーの山本稔氏自身もその一人だ。

「宮崎に来てみると、趣味のサーフィンが一年中楽しめるし、街の雰囲気も温かい。ここで、おもしろい仕事ができれば最高だなと思いましたね」

2007年に設立されたアラタナは、WEBショッピングサイト構築・運営支援を手掛けるITベンチャー。およそ1000社の顧客を持ち、そのうち9割は東京の企業である。まさに、場所を選ばずに企業が成長できることを体現している企業だ。

主力事業はWEBショッピングサイト構築・運営支援。約1000社の顧客をもち、その9割が東京の企業だ

顧客の9割は東京 地方企業のマイナスはない

山本氏は三重県出身。鈴鹿工業高等専門学校を卒業後、前川製作所に入社した。2年目に宮崎支社に配属されるが、当時IT起業家のライブドア堀江氏が語った「創業したら、一番、力を入れないといけないのが営業」ということばに影響を受け、25歳でリクルートに入社し、タウンワーク宮崎の営業に関わった。

「求人の仕事をしていましたが、自分が働きたいと思える会社がありませんでした。それならば理想の会社を自分で作ろうと思いました」と山本氏は語る。

「同時に、『人はなぜ働くのか?』ということに興味がわき、色んな人の考えをWEBを使って広く発信したいと考えていました。そのとき、紹介してもらったWEBデザイナーが、現社長の濵渦伸次でした」。未来の働き方とWEBに関する熱い議論は、いつのまにか、一緒に会社をつくろうという計画に変わった。

当時、山本氏は29歳、濵渦氏24歳。濱渦氏の同級生でプログラマーの穂満一成氏が加わり、2007年、リクルートに籍をおきながら、株式会社アラタナを立ち上げた。

社名のアラタナとは、「新たな価値を創り出す、新しいサービスを創り出す」という意味だ。

「最初の目標は、とりあえずECサイトを100個作ろうということで、電話帳を開いてとにかく電話でした。宮崎だけではすぐに営業先がなくなり、必然的に県外にも当たるようになっていきました」

仕事をとる上で、地方企業であることのマイナス要素は全くなかったという。「都会の企業は合理的な判断をするので、プレゼンすればサービスの価値をわかってくれる。逆に地方では、『お付き合い』など都会にはない判断基準も多いので苦労しました。インターネットという、距離の垣根がなく公正な競争ができるビジネス環境があったからこそ、アラタナは成長できたのだと思います」

アラタナの業務フロア。社員の半数以上がUIJターン者で、異業種からの入社も多い

地方だからこそ「ハイレベル」に ユニークな人材育成制度

アラタナは設立当初から、「宮崎で1000人の雇用をつくる」という目標を掲げている。なぜ地方での成長にこだわるのか。

「確かに目先の成長を考えれば、東京に会社を置くほうが合理的かもしれません。しかし、少子高齢化などの現在の社会課題は、東京一極化という短期的合理性を追求した結果だと思います。いずれ、今の働き方や企業の仕組みに、限界が来るのではないでしょうか」。そう考えるからこそ、アラタナは地方で会社を成長させるというモデルを追求し、高い雇用目標を掲げてきた。

現在の社員数は140人で、平均年齢は30歳程度。半数以上がUIJターン者だ。今春は4人の新卒を採用。全く畑違いの農業関係や、銀行関係からの転職もあるという。

「人生は一度きり。価値あることに時間を使いたいですし、一緒に働く仲間にも価値ある時間を過ごしてほしい」と山本氏はいい、こう続ける。

「地方は都市部に比べて物価や地代が安いので、人的コスト、物的コストの両方を抑えることができます。メリハリをもって生き生きと働ける場所をつくれば、優れた人材は集まります。一番重要なのは仕事のレベル。地方であっても、いや地方だからこそ、ハイレベルな仕事をする必要があります」

それゆえ、アラタナは社員に成長機会を提供することを重視しており、他社にはないユニークな人事・福利厚生制度を数多く用意している。

企業間留学制度「クロスターンシップ制度」は、他社の視点や課題解決法を学び、自社に活かすための制度だ(写真は留学成果報告会の模様)

2014年からは、勤務2~3年目の社員を対象にした企業間留学制度「クロスターンシップ制度」を始めた。東京の企業とアラタナとの間で一定期間社員が入れ替わって業務に就き、他社の視点や課題解決法を学ぶという仕組みだ。留学後は留学先・自社の両社に向けて課題と改善提案のプレゼンを行う。この制度は擬似転職体験であり、人材流出を防ぐための方策でもあるという。

ほかにも、社内で勉強会を開催する際に、人数分のピザとドリンクを会社が負担する「ピザごち制度」や、部署を横断してコミュニケーションを促すため、抽選で選ばれた社員が会社経費で一緒にランチをする「シャッフルランチ」といった制度もある。

「アラタナって東京の企業と変わらないね、と思わせたいですね。事業を通じて地方で働く魅力を発信していきたい」と山本氏。国が地方創生を掲げて東京一極集中の是正に本腰を入れはじめた今、アラタナの取り組みは大きな注目を集めている。

山本稔(やまもと・みのる)
アラタナ取締役副社長
最高執行責任者(COO)

地方創生のアイデア

月刊事業構想では、「地域未来構想  プロジェクトニッポン」と題して、毎号、都道府県特集を組んでいます。政府の重要政策の一つに地方創生が掲げられていますが、そのヒントとなるアイデアが満載です。参考になれば幸いです。

※バックナンバーには、そのほかの都道府県も掲載されております。是非ご一読ください。

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