受け手の心を感動・共振させる コミュニケーションの構想

事業は一人では成し得ない。事業構想の最終局面には、理解し、共感し、行動してくれる人々が必要だ。本気の賛同者を集めるためのコミュニケーションとは。
文・小塩篤史、中嶋聞多 事業構想研究所 実践知研究センター

 

事業構想サイクルの最終局面

本連載も、今回をもって最終回となる。なんどか登場した事業構想サイクルの最終局面である「コミュニケーション」が今回のテーマである。コミュニケーション、つまり前回、詳述した「構想計画」を人々に伝えるところでサイクルは一周し、ここからはいよいよ実行の段階へと移行する。MPD(Master of Project Design:事業構想修士)はこの事業構想サイクルを高速で廻し、いくつもの事業構想を生み続けるのが使命である。

だが「コミュニケーション」と一口にいっても、その意味するものや方法は多種多様である。カタカナ語としてひろく流通しているが、辞書によると、communicationには「通信」と「意思疎通」の2つの意味がある。前者は機械同士のコミュニケーション、後者は人と人とのコミュニケーションというわけだ。その方法も、対面、手紙、電話、メール、SMSなど枚挙にいとまがない。もちろんここでは、人と人のコミュニケーション、なかでもビジネスシーンでの代表的なコミュニケーションであるプレゼンテーションを念頭において解説してみたい。

コミュニケーションの記号論

コミュニケーションにおいて伝わるものあるいは伝えられるものはなにか。われわれはそれを情報ないし知識とみる。情報とは動的な記号(sign)にほかならない。知識はもう少し体系的・静的なイメージがあるが、コミュニケートされる以上、本質的には情報とかわらない。

記号論(semiotics)ないしは記号学(semiology)では記号を、記号表現と記号内容が不可分に結びついたものと定義している。これらは、記号学の創始者フェルディナン・ド・ソシュールらに敬意を表してか、記号表現をシニフィアン(signifiant)と記号内容をシニフィエ(signifié)とそのままフランス語で呼ばれることも多い。ここですこしだけ注意してほしいのは、たしかに記号はシニフィアンとシニフィエが表裏一体的に結びついて成立するものだが、シニフィエすなわち記号内容は多義的であるということだ。たとえば気象予報でよくみかける「☀」は、直接的には太陽を表す図像だが、晴れという意味も重なっている。

図1をご覧いただきたい。「コミュニケーションの記号論」と呼ばれる立場からの見解をあらわす基本的な図式である。人と人とのコミュニケーションが成立するためには、まずなんらかの情報や知識を伝えようとする送り手(sender)がいて、それを受けとめようとする受け手(reciever)がいる。その間には伝える手段としてのメディア(media)がある。だがそれだけではない。図にあるように、「コード(code)」と「コンテクスト(context)」と呼ばれる、われわれがふだんあまり意識しない要素が重要な働きをしているのである。

順を追ってみていくことにしよう。送り手は頭のなかに伝えたい内容を持っている。それらにはすでに言語化され、構造化・体系化されたものもあれば、いまだ言語化されていないものもあるだろう。送り手はそれらを可能な限り、辞書や文法、規則・規範や法律、はては習慣や文化まで利用可能なコード群Aを参照しながら、伝達可能な情報としてまとめあげていく。そしてこの情報はメディアを経由して受け手に届けられ、今度は受け手が利用可能なコード群A'を用いてその意味内容を理解するのである。さらにまた受け手が送り手となって情報を伝え、その繰り返しによって双方向のコミュニケーションが成立する。機械的なコミュニケーションであれば、A=A'として説明が終わりとなる。すなわち、解読である。

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