2015年1月号

MPDサロンスピーチ

歴代内閣の経済政策者が語る アベノミクスが切り拓く日本

島田 晴雄(千葉商科大学学長)

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「ジャパン・アズ・ナンバーワン」から一転、「失われた20年」にあえいできた日本。政権交代後に掲げられた「アベノミクス」。その効果と、問題点は?これからの日本経済の行方を、政府の政策形成に深く関わってきた島田晴雄氏が語った。

これからの日本経済を洞察した話に、院生は熱心に聞きいった

デフレマインドからの脱却

90年代半ばから始まり、世界でも珍しいほどの長いデフレに見舞われた日本。経済は停滞し「失われた20年」と呼ばれる期間を経て、安倍晋三総理大臣率いる第2次安倍内閣が発足。通称「アベノミクス」を打ち出して2年が経過した。千葉商科大学の学長を務める島田晴雄氏は、経済学者であり、また歴代の内閣の経済政策にも深く携わってきた。「アベノミクスで日本の雰囲気は確実に明るくなってきた。世界は非常に関心を持って日本を見ている」と話す。

長く続いたデフレの最大の問題は何か。

「企業は投資もせず、消費者は消費を先延ばしにしてきました。日本全体がお金を使わなくなり、日本経済は収縮してきました。“投資しない”“消費しない”という『デフレマインド』からの脱却こそが安倍政権の最大の課題です」

アベノミクスはデフレからの早期脱却と日本経済の再生を目指し、金融・財政・成長戦略の「三本の矢」をかかげた経済政策だ。その第一の矢「異次元金融緩和」では、日本銀行が明確な数字で達成目標値を掲げることによって、金融への期待感を変えることができた。

「金融への期待感を変えたことは大成功。外資はもちろん、一番動きの鈍い日本の機関投資家までもが投資に参入するようになりました。これからインフレになると認識されれば、さらに加速していく」と評価している。

社会がインフレに変わると、全く動かない世界から“動く世界”に変わっていく。経済全般に様々なことが起き、それらの配慮も社会に求められる。

「これからはデフレからインフレへの移行をスムーズにすることが重点になる。第二の矢である機動的な財政戦略により、資金が不足するところに提供していくべきです。経済成長に繋がるかは、これからの動き次第です」

財政戦略で市場を調整し、経済成長へとつなげていけるかどうか、世界からも注目されている。

日本経済が抱えるリスク成長戦略による解決

一方で島田氏は「金融への期待感は変わったが、日本経済は相変わらず危機状態」と警鐘を鳴らす。

「現在、国債の8割ほどを日銀が間接的に買っています。つまり政府が作った赤字を日銀が際限なく買っている現状で、財政規律がないことを世界に公言しているとも捉えられます。また、日本は財政再生計画の中でプライマリーバランスを2020年に0%にする財政再建計画を民主党政権時に国際公約として掲げています。来年までは計画を維持していますが、2016年から目標値を達成できない予測もあります」

財政の危機により国債が暴落すると、日本の借金の値がさらに増えていく。加えて、今後加速する高齢化社会によって国民負担率が上がり、日本経済の持続可能性がなくなるという調査結果も出ている。日本は依然として短期と長期の経済の難問を抱えている。

これらのリスクを経済成長によって解決しようというのが、アベノミクスの第三の矢である成長戦略「日本再興戦略」だ。産業・雇用の新陳代謝を図ること。健康や次世代インフラなど、これまでなかったマーケットを生み出していく。

そしてTPPやRCP、FTAPなどで貿易圏を増やすという3つのアクションプランを軸に、実に多くの政策を打ち出している。

「安倍政権は農業改革や医療改革など、戦後から利権やしがらみが築かれてしまった業界の改革にも取り組んでいます。明らかに正面から正攻法で改革に取り組んでいます」

しかし、それだけでは経済成長は達成できない。

「GDPは労働力人口×一人あたりの生産性で計算され、それぞれの伸び率から経済成長率が算出されます。日本では一人あたりの生産性上昇率は上がっていますが、高齢化社会によって労働力人口が減少し、成長率はマイナス成長と予測する専門家も多くいます」

成長戦略を担うのは国民

日本の経済成長に懐疑的な専門家も多い中、島田氏は「高齢者をいかす」社会づくりを提案する。

島田 晴雄 千葉商科大学学長

「高齢者は体力的には衰えますが、様々な機械の助けを借りたら若い人たちには負けません。そして、若い人たちにはなく、高齢者が持っているものが、経験、知恵、お金と人脈。高齢者が起業や投資の主体になることができます」

このような発想の転換によって事態を打破する手立てが見つけられるであろう。

「成長戦略は安倍首相がやるのか?そうではなく、国民が自らやることです。政権が中心となり、過去何十年と築かれてきた岩盤規制を変える姿勢になっています」

国民が支え、インフレマインドで行動すべき時。国民自身がどう行動を変えていくかが一番問われている。

続けて、ゼロから立ち上がり、発展した国としてドバイの例を挙げている。ドバイは石油がとれない国だが、東西の結節点であることを武器に、航空機の着陸料無料をはじめて自由化し、経済発展につながった。

「戦後の日本も何もないところから発展したように、やろうと思えばできること。今、日本人の個人資産は世界一であり、その資産が起業や投資の資金として動けば必ず成長できます。金融政策と財政政策は政権が進めてくれるのだから、経済成長は国民が進めていこう。国民の行動パターンが変われば、日本は変わる」と力強く話した。

舌鋒鋭く、時に過激に、ユーモアを交えて話す島田氏に触発されたのか、講演のあとも参加者から質問が上がり、議論は白熱していった。

島田晴雄(しまだ・はるお)
千葉商科大学 学長

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