未来を構想する「場」づくり

異なった組織や立場の人々が、未来志向で創造的な対話をおこなう場として、近年「フューチャーセンター」が注目されている。価値の高いアイデアを生み出す「場」づくりとはどのようなものか。

「Dialogues house」はオランダ最大の銀行が開設した民間のフューチャーセンター。かつてのディーリングルームを活用

創造的な対話をおこなう「場」
フューチャーセンター

前回、私たちは「未来学」が「事業構想学」の基盤になると説いた。未来志向(思考)こそ、事業構想を先導するキー・ファクターであると考えているからである。その「未来」つながりというわけでもないが、今回はまず、最近わが国でもしばしば耳にするようになった「未来センター(Future Center)」の話からはじめようとおもう。

フューチャーセンターとは、異なった組織や立場の人々がその組織や立場を離れ、自由に関係性を形成し、未来志向で創造的な対話をおこなう「場(ba)」である。人は誰しも、過去や現在について議論すると、しがらみや利害の虜となってしまう。

しかし未来や夢について語りあうとき、人はみな創造的になりうるものである。フューチャーセンターが、未来について語る場としてみずからを定義する意味がここにある。

物理的には、創造性が生まれるよう空間デザインに工夫をこらした施設などをさす場合が多い。壁一面を使ってブレインストーミングが出来る空間や議論を活性化させる会議場、その結果を見える化する空間などが一例である。そういった工夫もさることながら、フューチャーセッションと呼ばれる創造的議論の進め方などむしろソフト的なしくみが重要といわれている。

このフューチャーセンターという〈新たな場〉の概念を提唱したのは、現在、スウェーデンのルンド大学教授をつとめるレイフ・エドビンソンであり、1996年、当時彼が所属していたスカンディア保険会社が創設したSkandia Future Centerが最初とされている。

その後、オランダ政府やデンマーク政府、イタリアのテレコム・イタリアなどがつぎつぎにフューチャーセンターを開設していった。なかでもオランダは熱心で、国税関税執行局のShipyard、道路水管理庁のLEF、ABNアムロ銀行のDialogues Houseなど有名なフューチャーセンターが多く存在する。

「LEF」は欧州最大のフューチャーセンター。座敷を思わせるようなリラックスした対話空間だが、随所にハイテクも駆使されている

興味深いのは、フューチャーセンターの源流には、わが国の野中郁次郎らが提唱した知識経営(Knowledge Management)論がある点である。ba(場)という概念が、そのまま通用しているのもそのためである。しかしながらわが国でフューチャーセンターが創設されたのは2007年になってからであり、富士ゼロックスのKDI(Knowledge Dynamics Initiative)Future Centerが最初である。

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