2014年5月号

MPDサロンスピーチ

「新しい公共」と企業の共有価値

佐藤尚之(コミュニケーション・ディレクター ツナグ代表)、松井孝治(慶応義塾大学総合政策学部 教授)

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これから企業に求められるコミュニケーションと、公共に求められる官民の連携について、ベストセラー『明日の広告』でも有名なコミュニケーション・ディレクター佐藤尚之氏と、鳩山内閣にて「新しい公共」を提唱した松井孝治氏が、事業構想大学院大学で講演した。

佐藤 尚之 コミュニケーション・ディレクター ツナグ代表

SNSの登場、情報洪水、メディアが多様化し、企業のコミュニケーション戦略は岐路に立っている。これからのコミュニケーションはどこへ向かうのか。また少子高齢化による地域の過疎化が進み、防災・減災の重要性が高まる中、これからの「公共」に求められる価値は何か。

この2つの問いに答える共通のキーワードは「仲間ごと」。

企業のコンセプトを
個人に直接届ける“SNS”

企業のコミュニケーションが大きく変化したのは2008年。TwitterやFacebookなどSNSの登場がきっかけと佐藤尚之氏は話す。

「SNSは人が中心のメディアです。これまでの広告は商品やサービスの認知や販促を助けるもので、一方的に発信し、興味・関心がない人を振り向かせるツールでした。しかしSNSは生活者の中で機能し、会社という枠を超えて人と人との関係を作ることができます。企業は市場の声を直に聞くことができ、生活者の課題を解決する商品やサービス開発が盛んに行われるようになりました。SNSが双方向のコミュニケーションを可能にしたのです。

事業構想段階にある時こそ、コミュニケーションが必要です。事業のミッションは商品やサービスだけで達成できるものではなく、生活者の課題を解決し、消費者を笑顔にすることです。そのためにコミュニケーションを活用した事例が増えています。例えば、コカ・コーラ社は『Open Happiness』を社のコンセプトとしていますが、“リフレッシュ”や“ハピネス”を商品だけでなく、Twitterでも届けるサービスを始めました。誕生日にコカ・コーラに関するツイートがあると、コカ・コーラ社が個人宛に誕生祝いのコメントを送ります。それは“ハピネス”を届けるためです。SNSは企業のコンセプトを『個人の共感』につなげることができる新しいコミュニケーションです」

伝わる情報は『0.004%』

現代の大きな課題として「情報洪水」、「メディアの多様化」がある。SNSで生活者同士がつながった時代に、いまコミュニケーションで何ができるか。その問いに佐藤氏は答える。

「私たちが日々得る情報のうち、99.996%は素通りされて記憶に残っていないという報告があります(総務省、2009年)。つまり情報や広告を出しても生活者に伝わるのは、たったの『0.004%』しかないということです。またメディアの増大、エンタメ過剰により、1つのメディアから一人の人に伝わる率はより低くなる。さらにSNSで発信される友だちの近況(仲間ごと)が、世界の重大ニュース(世の中ごと)と同じウェイトで新しい情報として日々届けられる。SNSの登場により『世の中ごと』が個人から遠ざかり、『仲間ごと』の重要度が上がっています。

現代の情報洪水状態では興味・関心のある人にしか届かない。それではどうすべきか。それは『友だちという最強メディア』を活用することです。事業構想する時も、実際の事業を広める時もまずは友だちに共感をしてもらい、友だちに広めてもらう。つまり『仲間ごと』を活用することが現代のコミュニケーションです。」

官と民が近づく「新しい公共」

松井 孝治 慶応義塾大学総合政策学部 教授

佐藤氏が掲げた「仲間ごと」は、公共の場でも重要なキーワードだと松井孝治氏は話す。

「私は官僚の世界から政治の道へと飛び込み、現在は『新しい公共』を推進しています。『新しい公共』とは、市民、NPO、企業などが積極的に公共的な財・サービスの提供主体となり、教育や子育て、まちづくり、介護や福祉などの身近な分野において、共助の精神で活動することです。つまり、官と民がお互いに公共を支えあうことです。

公共とは何か。国がお金を出す事業のことでしょうか。私は子どもの頃から公の仕事を目指して、官僚の世界に入りました。しかし実際には、地域の人たちが見返りのない貢献をしている例をたくさん見てきました。阪神淡路大震災で救援をする大学生や、子どもの教育を親と一緒に考え行動する地域の方もいました。公共は官僚や自治体だけが動かせるものではなく、官と地域の方たちが共同することで動かすことができると実感しています。国だけが行う公共は『世間ごと』でしかありません。公共を『仲間ごと』にすることが『新しい公共』であり、さらに多くの地域の方々に身近な公共にしていきたいと思います」

両氏は東日本大震災の復興支援情報サイト「助けあいジャパン」を主導している。

「政府や自治体にとって有益な情報を編集して市民に発信しています」(松井氏)

「情報を編集して見やすくすることは大切です。さらに、興味を持った人は必ず元のデータを確認するので、政府も企業もホームページや関連する資料を整備しておくことが求められます」(佐藤氏)

佐藤尚之(さとう・なおゆき)
コミュニケーション・ディレクター ツナグ代表
電通にてソーシャルメディア領域も含めた次世代のコミュニケーションを扱い、シニア・クリエイティブ・ディレクターを務めた。2011年に独立し、ツナグ代表に就任。東日本大震災をきっかけに発足した「助けあいジャパン」会長や復興庁政策参与も務める。著書『明日の広告』(アスキー新書)。「さとなお」の名前で食や旅のエッセイを出している。
松井孝治(まつい・こうじ)
慶応義塾大学総合政策学部 教授
元参議院議員。鳩山内閣で内閣官房副長官を務め、「新しい公共」や統治機構改革(国家戦略局・内閣人事局構想など)を提唱。2001〜2013年に参議院議員として内閣委員長など、民主党では筆頭副幹事長やシンクタンク「プラトン」統括理事などを歴任。2013年より現職。
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