日本製紙「総合バイオマス企業」へ

大正13(1924)年の創業より、八代の地に脈々と根付いてきた製紙工場がある。八代平野にそびえる赤と白の煙突は、地域を象徴する景色の一つだ。日本製紙の八代工場が今、新エネルギー事業への転換に向け、大きな舵を切った。

「八代の地に製紙業が根付き、今日まで続いてきたのは、八代が豊かな森林に囲まれていること、そして球磨川という美しく豊かな水の流れがあることが大きな理由です」

日本製紙八代工場・内海晃宏工場長は、製紙には原料となる木材はもちろんのこと、美しい水が欠かせないと語る。

古くから物資輸送の拠点であり、現在では熊本県屈指の重要港湾として国際港の役割も果たす八代港の存在も大きい。鉄道や高速道路の整備も早く、八代港と合わせた物流拠点として好条件がそろう八代には、これまで日本製紙を含め、多業種にわたる工場が多く進出している。

近年では九州新幹線も全線開業し新八代駅も新設、八代と大都市との人の往来も飛躍的に便利になった。

2015年3月開始、九州電力に売電

2013年4月、日本製紙八代工場はバイオマス発電事業設備の新設計画を発表した。投資額は30億円強で、フル稼働による年間発電量は約4000万kWを見込む。発電開始は15年3月予定で、九州電力への売電を行う計画だ。

JR八代駅側から見える日本製紙八代工場。地元の祭り「妙見祭」のPR壁画が注目を集める

製紙という大きな柱に加え、エネルギー供給事業へ乗り出す大きなきっかけとなったのが、昨年7月に始まったFIT制度(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)である。

「現状の木質バイオマス発電の原料は、主に建築廃材です。九州には杉の間伐材などの未利用木材が豊富にあるのですが、搬出にお金がかかるため、これまでは利益を生む利用ができずにいました」

FIT制度では、建築廃材などのリサイクル木材を燃料とした木質バイオマス発電による電気買い取り価格が13円/kwhであるのに対し、未利用木材を燃料とした場合の電気買い取り価格は32円/kwh。これによって、未利用木材を利用した木質バイオマス発電事業の仕組みを構築することが可能となったのである。

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