ドローン、救急医療用物資のラストワンマイル配送をカバー アフリカの僻地で活躍中

(※本記事は『Reasons to be Cheerful』に2024年7月9日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

陸上の交通インフラに問題がある地域で、ドローン技術が迅速な緊急物資の輸送を実現している。輸血用血液から毒蛇の解毒剤まで、さまざまな物資が運ばれている。


2023年の大晦日の夜11時55分、ルワンダ北部の医師がWhatsApp(※編集注:海外で普及しているLINEのようなコミュニケーション用アプリ)で物資を要請した。出産直後の女性が出血していたためだ。

陸路ではルワンダ北部の山岳地域に到達するのに約4時間もかかってしまう。しかし今回、わずか18分で緊急物資が到着した。要請した医師が勤める医療センターの外に、ドローンが止血剤を搭載した赤い箱を、白い紙製のパラシュートで降下させたのだ。

しかし、それを使った治療の後も女性の容態は悪化していた。

「その10分後、再度血液を送って若い母親を救うことができました」と、中央アフリカの医療センター向けにドローン配送サービスを運営するZipline社のルワンダ担当ゼネラルマネージャー、ピエール・カイタナ氏は語る。

このような配送により、Ziplineを導入したルワンダの一部病院では2016年12月から2020年6月までの間に産後出血による死亡率が50%以上減少した。ルワンダは、命を救う医療物資の配送にドローンを活用するアフリカ諸国のひとつである。毒蛇の解毒剤からワクチン、結核などの検体に至るまで、この迅速な輸送技術は地形、インフラ、天候が物流の大きな障害となる地域の「ラストワンマイル」輸送に役立っている。copyright:Zipline

ドローンは世界中の僻地で同様の問題を解決している。例えば、バヌアツの孤島の村では赤ちゃんや妊婦のためのワクチンが無人飛行で運ばれているウルグアイの農村部では薬や母乳が届けられ、カナダのブリティッシュ・コロンビア州北部では処方薬がドローンで配達されることで、住民が遠方の薬局に行く手間を省いている。そしてアメリカでも、ドローンによる家庭への薬配送が始まりつつある。

ルワンダ、マラウイ、ガーナは医療システムにおけるドローンの可能性を最初に探求した国々のひとつである。アフリカの一部地域では従来、未舗装の道や洪水で道が寸断されることが医療物資の配送を妨げてきた。極端な気象条件も影響を及ぼす。高い気温はワクチンや検体のようなデリケートな物資に悪影響を与えてしまう。

「人々が直接医療を受けることが非常に難しいのです」と、マラウイとガーナで医療システムに対するドローンの影響を研究しているライプツィヒ大学の研究者、エドウィン・アンバニ・アメソ氏は言う。マラウイ南部のような地域では嵐が頻発し、「人々は日常的な医療インフラから頻繁に断絶されてしまいます」と説明する。

Kabgayi病院のラボ技師、プロスペル・ウザバリホ氏がZiplineドローンから紙のパラシュートで届けられた血液袋を検査する様子。
2016年以降、Ziplineは輸血用血液をドローンで届けている。copyright:Zipline

ドローン企業は特に、輸血関連物資などの希少で保管が難しい緊急医療物資の配送に大きな影響を与えている。

シリコンバレーに拠点を置くZipline社は、2016年にルワンダで血液製品の配送を開始した。輸血用血液へのアクセスは特に母体死亡率にとって重要である。世界中どこでも、出産に関連する最大の死因は重度の出血であり、ルワンダでは2009年から2013年の間に産後出血が母体死亡の22.7%を占めていた。

しかし、ルワンダの遠隔地間の移動には数時間かかるため、必要な時に血液製品を確保するための供給管理は課題であった。血液は保存期間が短いうえ、必要な種類を揃えておく必要がある。

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