都市部の緑地、平均-3℃の効果 冷却能力が高い都市は10位まで全部アメリカ

(※本記事は『SciDev.Net』に2024年9月5日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

コンクリートの建物が並ぶハノイ(ベトナム)の町を、やや高所から見下ろした写真。遠くまで広がる街並みはうっすらと靄がかかって見える
ハノイ(ベトナム)の一部。低・中所得国の多くの都市で、気候変動の影響により暑さ対策のニーズが高まっていく。 Copyright:Rob Glover (CC BY-SA 2.0)

新たな研究により、低・中所得国の多くの都市が、気候変動とは別の要因で猛暑にさらされていることが明らかになった。その要因とは、冷却効果をもつ緑地の不足だ。

アフリカ、ラテンアメリカ、アジアの多くの都市部住民は、猛暑の影響を最も受けやすく、温室効果ガスの排出量が減少しない限り、気温はさらに激化し、死者が増えると予測されている。

英エクセター大学の気候変動専門家であるティム・レントン氏は、緑地や屋上庭園、樹木などの都市緑化は「致命的な影響をもたらす猛暑と湿度への対策として非常に効果的」だと指摘する。「現在、気候変動によって命を落としているのは、多くが都市のスラム街に住む人々です」同氏は言う。

今回発表されたこの国際的な研究は、2024年9月に学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載されたもので、低・中所得国の都市が、富裕国の都市と比べて緑地による「冷却能力」が30%低いことを発見したものだ。ただし同研究では、これらの地域にはまだ、緑地を増やして冷却効果を高め、不平等を軽減する大きなポテンシャルがあるとも述べている。

緑地が増えると都市の冷却能力が増える

研究者たちは、世界の500都市の衛星データを使用して、都市内の緑地が都市の表面温度をどの程度冷却しているかを評価した。温暖化が進行し、世界中で周囲の農村部よりも都市が高温になる「ヒートアイランド現象」が重なり、熱関連の病気や死亡がますます増えている。

研究によると、都市の緑地は屋外環境を冷却し、住民にとって必要な日陰を創り出すことで、このリスクを軽減できる。都市部に住む人間の数は、世界人口の半数以上を占めている。都市の緑地は、暖かい季節には平均で都市の表面温度を約3°C冷却できることが分析により示されており、「猛暑の際には、非常に重要な差となる」とレントン氏は強調する。

都市の緑地、特に都市内の森林の冷却効果は、日陰を作ることと水の蒸発によるものだという。

「冷却能力の高い都市」は米国が1位~10位を独占

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