バラのトゲを無くすことに成功 遺伝子組み換えで花き・農作物に新品種の機会

(※本記事は『THE CONVERSATION』に2024年9月16日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

トゲのない茎を持つ屋外で咲くバラの花
遺伝子編集のおかげで、トゲのないバラが生まれた。 Copyright: James Satterlee CC BY-SA

熱心な園芸愛好家なら誰もが知っているように、鋭いトゲを持つ植物は、まるで怒った猫と格闘したかのような傷を残すことがある。トゲを完全になくして、美味しい果実や美しい花だけを残すことができたらすてきだと思わないだろうか?

私は遺伝学者であり、バラ、ナス、さらには一部の草など、さまざまな植物でトゲを発生させる遺伝子を最近同僚たちと発見した。遺伝子操作によってすべすべの茎を持つ植物が、近い将来、あなたの近くの園芸用品店に並ぶかもしれない。

自然な進化を加速させる遺伝子編集技術、CRISPR

植物や他の生物は、時間とともに自然に進化する。DNAに偶然生じた変異(突然変異)が生存に有利な場合、その変異が子孫に引き継がれる。何千年もの間、植物の育種家たちはこれらの変異を活用し、収穫量の多い品種を作り出してきた。

1983年に農業分野で最初の遺伝子組み換え生物(GMO)が登場した。ビタミンA欠乏症に対抗するために開発されたベータカロテンを多く含むゴールデンライスや、害虫に強いトウモロコシは、遺伝子改変が農作物にどのように活用されてきたかの一例である。

最近の2つの進展により、状況はかなり変化した。CRISPRと呼ばれる技術を使った遺伝子編集が登場し、植物の特性をより簡単・迅速に改変できるようになった。生物のゲノムを本に例えるなら、CRISPRを使った遺伝子編集は、あちこちに数行を追加したり削除したりするようなものだ。

このツールは生物の全DNA(ゲノムの塩基配列)の解析をさらに容易にし、生物の特性を予測可能な状態で操作する技術を急速に発展させている。

私たちのチームは、ナスの茎やヘタの部分に見られるトゲを制御する重要な遺伝子を特定し、他のトゲのある種の同じ遺伝子も編集することで、滑らかでトゲのない植物を生み出すことに成功した。またナスだけでなく、干しぶどうのような実を付ける、砂漠に適応した野生植物のトゲも除去できた。

2組の写真が2枚ずつあります。最初の組は、トゲのある果実が密集している植物と、そのトゲのある果実を収穫した様子を示しています。次の組は、同じ植物ですが、果実にトゲがなく、そのトゲのない果実を収穫した様子を示しています。
デザートレーズン(Solanum cleistogamum)が生まれ変わる。 Copyright: Blaine Fitzgerald CC BY-SA

さらに、バラにおいても近縁の遺伝子の発現をウイルスを使って抑制し、トゲのないバラを作ることに成功した。

続きは無料会員登録後、ログインしてご覧いただけます。

  • 記事本文残り61%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。