砂漠で育つトウモロコシ 気候変動の時代に実践される乾燥農法

(※本記事は『reason to be cheerful』に2024年12月16日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

砂地からカボチャやメロン、トウモロコシが芽吹くという非現実的な光景は、古来の農法が現代に生きることを映し出している。

赤や黄色など色とりどりのトウモロコシと紫色の豆が入ったバスケット
Copyright: Michael Kotutwa Johnson

マイケル・コトゥワ・ジョンソン氏が、石造りの自宅の裏にトウモロコシの収穫に行くと、そこにある畑は北米の農村地帯でよく見られる、果てしない列が続くコーン農場とは全く違って見える。5、6本ずつ束になったトウモロコシの茎は、砂漠から束になって飛び出しており、畝が狭いというよりはブッシェル(bushels)に近い。コトゥワ・ジョンソン氏は「私たちは一般的な14インチ間隔の列では植えません」と話す。

その代わり、ネイティブ・アメリカンのホピ族の一員であるコトゥワ・ジョンソン氏は、祖父から学んだホピ族の伝統農法を実践している。この畑は、米アリゾナ州北東部に広がるリトル・コロラド川高原のキコツモビ村(Kykotsmovi Village)近く、フラッグスタッフの街から車で90分のところにある。「春には、穴ごとに8〜10粒のトウモロコシや豆の種を、間隔を空けて植えます。そうすることで風雨に耐えるために房がまとまって立ち、土壌の水分を保ちます」。たとえば強風は、この不毛の台地にしばしば砂を吹き付ける。「2024年は非常に暑く乾燥した年でしたが、それでも育てた作物の中にはよい出来のものがありました」と満足げに微笑む。「カボチャ、メロン、豆にはよい年でした。これらを増やしていけるでしょう」。

茶色い岩山を背に枯草が広がる土地の前に広がるトウモロコシ畑
北米で一般的に見られるトウモロコシ畑とは全く異なるホピ族の畑。 Copyright: Michael Kotutwa Johnson

乾燥農法は、数千年にわたるホピ族の伝統だ。コトゥワ・ジョンソン氏は、風を遮るために植物の茂みや缶で作物を保護することはあるが、彼の作物は肥料、殺虫剤、除草剤、マルチングや灌漑なしでも元気に育つ。この地域では通常の年間降雨量が10インチ未満であることを考えると、さらに深い感銘を受ける。

気候変動の時代、農家が干ばつや予想不可能な天候パターンと戦う中で、乾燥農法の実践は、科学者や研究者の関心を集めている。たとえば、オレゴン州の乾燥農法研究所(Dry Farming Institute)はトマトやズッキーニといった、さまざまな作物を育てている提携農家を12軒リストアップしている。しかしオレゴンの冬は雨が降り、年間降水量は30インチを超える。一方、コトゥワ・ジョンソン氏の畑の作物が育つアリゾナ州の台地では、その3分の1以下しか降らない。メキシコ、中東、アルゼンチン、南ロシアやウクライナの農家のいずれも、自然の降雨量に頼る乾燥農法を実験しているが、条件や実践は地域によって異なる。

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