大企業の独占が進む世界の食料システム 悪影響も生む「食料の金融化」問題とは

(※本記事は『THE CONVERSATION』に2024年7月17日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

世界中で8億人以上の人々が日々飢えに苦しんでおり、さらに20億人以上が食料を手に入れるのに何らかの問題がある。しかし、現在の世界全体での食料生産量は地球上の全人類を養うのに十分な量を生産している。

このアンバランスな状況は、自然災害、戦争、脆弱なサプライチェーン、経済的な不平等などの影響によって、部分的には説明できる。これらはすべて、世界的な食料システムの問題を浮き彫りにする重要な要素であり、一つの場所でのショックが別の場所へと迅速に広がり、時には壊滅的な結果をもたらすからだ。

しかし、これだけでは完全な説明にはならない。糖分、塩分、脂肪を多く含んで、不飽和脂肪酸を使った硬化油や、添加糖、香味料、乳化剤、保存料などの添加物を付与した超加工食品の増加農家が直面している財政的困難、食料生産が環境に与える有害な影響への対応の失敗を説明するには不十分である。

こうした傾向を説明するためには、市場の集中度、つまり少数の非常に大きな企業が、我々の食べる食料生産と供給を支配するようになった過程を考察する必要がある。

近年、世界の食料システムは、特に企業の合併や買収の増加を通じて、より少数の企業による集中が進んでいる。これは、大企業が競合他社を買収し、重要な分野を完全に支配するまでの過程を経た結果である。

高い市場集中は透明性の欠如、競争の弱体化、そして少数の企業に権力が集中することを意味する。我々の研究では、種子や肥料、機械、製造業に至るまで、世界の食料システムのあらゆる段階でM&Aが進行していることが明らかになった。

これは、人間の生命維持だけでなく、利益を生む投資対象として食料がますます認識されていること、つまり「食料の金融化」の一環である。

人々が食料を売買するのは非常に長い間続いてきたことだが、近年、巨大な金融機関が世界の食料システムに大きく参入している。年金基金、プライベート・エクイティ、資産運用会社がこの分野に多額の投資をしている。

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