低所得者向け住宅の改修が温室効果ガス削減に 住民への有効な経済支援にもなるか
(※本記事は『THE CONVERSATION』に2024年11月19日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

顧客や投資家の圧力を受け、多くの米国企業が気候への影響を自発的に削減することを誓約している。しかし、それが必ずしも自社の温室効果ガス排出量を直接削減することを意味するわけではない。
多くの企業は、代わりに他者が行う排出削減プロジェクトに資金を提供し、カーボンオフセットを取得する形を取っている。
しかし、この手法には懐疑的な見方もある。その主な理由は、カーボンオフセット用に開発されたプロジェクトが、貧困国の土地を占有し、小規模農家を追い出し、生計を脅かしてきた歴史がある点にある。また、国際的に取引されるオフセットの質が確認しにくいことも問題だ。例えば、森林オフセットプロジェクトの調査では、多くのケースで主張されるほど効果的に炭素を吸収していないことが示唆されている。
私たちは、より良い解決策があると考えている。それは、企業がカーボンオフセット資金の一部を、温室効果ガスの削減だけでなく、企業が活動する米国内の地域社会の生活向上にもつながるプロジェクトに投資することである。
われわれのチームであるヴァンダービルト大学の気候・健康・エネルギー平等研究所では、ナッシュビルを拠点にしたパイロット研究を通じて、企業のオフセット資金を低所得者向け住宅のエネルギー効率改善に活用する可能性を探っている。エネルギー効率の改善は、エネルギーやコストの削減だけでなく、住環境を適切に暖房・冷房できないことで生じる多くの健康リスクを軽減する効果もある。
これらの改善は、法的義務のない自主的なカーボン取引市場の地域や社会に貢献するためのカーボン削減枠でカーボンオフセットを販売することにより資金を調達できる。低所得者層向けのエネルギー効率改善がもたらす経済的・健康的・気候的な利益は、企業にとって気候目標の達成と地域社会での評価向上の両面で魅力的な選択肢となる可能性がある。
エネルギー効率は多面的なメリットを生む
米国では、低所得世帯がエネルギー費用として収入の6%から10%を支出している。このような家庭は、老朽化した断熱性の低い住宅を快適な温度に保つのに苦労していることが多い。
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