協同組合が防災・減災を主導 「自助」と「共助」で進める事業継続力強化

(※本記事は「関東経済産業局 公式note」に2025年3月10日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

【連携事業継続力強化計画】協同組合熊谷流通センターの佐野常務理事(右)と金原事務局長

協同組合熊谷流通センター(埼玉県熊谷市)は、熊谷・行田地域の民間中小事業者が卸団地の造成からインフラ整備まで全て行い、共同物流事業、共同警備事業などを行ってきた、まさに地域事業者が「街」を作り上げた組合です。現在は新たな役割として「防災・減災」に着目し、連携事業継続力強化計画を策定した上で取組を進めています。

今回は、連携事業継続力強化計画の認定の背景や、防災・減災に対する考えについて、金原事務局長、佐野常務理事に伺いました。

当組合が計画を策定する中で感じたメリットは、災害時における組合員である企業が行う「自助」と地域の機関である組合事務局が行う「共助」の「役割分担」を計画の中で明確化することで協同組合の求心力を高めることができるということです。

災害が起こった際には、自社の事業活動を復旧するための作業の他、共有スペースやインフラの復旧、それに伴う相互補助(物資や人手の融通)といった個社で対応できない状況が発生します。前者については個々の企業で自然と取り組まれるものですが、後者についてはとりまとめる存在がおらず、なかなか復旧が進まないケースが多く見られるところです。そこで組合が中心となり組合員である個々の企業と連携して当該部分を「共助」として位置づけることで、企業が「自助」に専念することができ、災害時に組合全体で対応することで、「組合に加入していて良かった」を感じてもらいたいと考えています。

これまでも当組合は、組合員の相互扶助の精神に基づき活動してきましたが、年月を重ね組合員の帰属意識が薄れてきたように感じ、協同組合という組織そのものの役割が問われていると認識するようになりました。それでも組合という形で組織化することに意味があると考え、組合としての求心力を高めるために何に取り組むのかを考えました。その結果、団地というエリアで組織された協同組合であることを生かし、組合員の関心も高く今後必要になってくるであろう「防災・減災」に対する取組を行うこととしました。連携事業継続力強化計画を組合員とともに策定し、災害時に組合員がいち早く復旧できるようにすることを至上命題に、組合が指揮をとり防災意識を高めていくことを目指しました。

まず、災害発生時において、最初の動作から避難行動、沈静化後の復旧まで一連の「行動フロー表」を作成し、組合員に配布するとともに、団地内のエリアごとにブロックリーダーを任命し、隣近所の組合員が団体で避難するスキームで定期的に防災訓練を実施することとしました。これにより組合員が連携して相互に支援できる体制を整備しました。

次に、早期の事業再開に向けて組合員への影響を極力少なくするために、団地内の通路(特に共用部分)の復旧手段や帰宅難民の保護等についても計画に定め、組合員をサポートできるような体制を整備しました。
そのほか、地域社会の安心・安全に貢献するため卸団地のストック機能にもスポットを当てました。各社が保有する物資、機材、重機、流通在庫等の活用を想定するなど、災害時における物資の供給機能も備えています。このような点が評価され、当組合は埼玉県から「災害時応援物流団地」に指定されています。

個々の企業である組合員は、日々忙しく、人員も限られていることから防災対策を後回しにしてしまいがちです。それを協同組合が各組合員に働きかけて、防災・減災に向けた取組を行っていくことで、災害が発生した際にも、組合員と協同組合が相互に連携して行動し、団地全体で災害からの早期復旧、事業の再開が可能となるのです。

計画策定の目的と取組内容について語る佐野常務理事(右)と金原事務局長
計画策定の目的と取組内容について語る佐野常務理事(右)と金原事務局長

協同組合熊谷流通センターについて

埼玉県熊谷市にある当組合は1972年に前身となる協同組合埼玉県北総合流通センターとして設立され、卸団地として敷地の取得から土地の造成、道路や緑地、上下水道の整備まで100%熊谷地域の民間事業者の手で作られた卸商業団地です。

現在は繊維や食料品、医薬品、資材等の卸売業57の事業所が所在しており、共同物流事業、共同給油事業、共同警備事業、駐車場等管理運営事業等に加えて、先進的な取組としてCI(コーポレート・アイデンティティ。1991年に検討開始、組合名の現名称への変更、愛称「ソシオ熊谷」及び緑をコーポレートカラーとした新マークとロゴタイプを制定し、1994年に発表)やBCP(事業継続計画。2011年2月に「防災・復興の手引き」を策定し、「大規模地震」を想定した防災組織・ルールをまとめ、組合員と災害対策本部の行動を明確化)の導入を行っています。

2025年には組合会館の建て替えが完了予定であり、次世代経営者の育成や地域の再整備にも取り組んでいます。

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関東経済産業局 公式note