職場での会話は「単なるゴシップ」か「情報共有」か、決めるのは誰か?

(※本記事は『THE CONVERSATION』に2025年3月16日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

ゴシップのイメージを表した木偶2組


廊下でばったり出会った2人の若手社員が、上司の威圧的な態度について話し始めたら、それはたいてい噂話とみなされる。しかし、2人のマネージャーがオフレコで、業績不振の社員について話し合った場合はどうだろうか?
 
どちらの状況も、ゴシップの伝統的な定義に当てはまる。つまり、共有される情報はその場にいない他人に関することで、情報はその他人を評価する形で、非公式に共有されるものだ。しかし、この2つの状況に対する見方は大きく異なる。
 
何をもってゴシップとするかは、私たちが考えている以上にあいまいである。何が本当に職場のゴシップにあたるのかを理解するために、私は184本の学術論文を調査した。
 
私が気づいたのは、客観的な基準ではなく、ある状況がゴシップであるという人々の共通認識こそが、カギだということだ。
 
ゴシップをこのように捉えることは「職場ゴシップのパラドックス」を理解するのに役立つ。つまりゴシップは信頼できる社会的情報源(内部情報)であると同時に、信頼できない情報源(単なるゴシップ)でもあるという考え方だ。
 
本研究においては、ゴシップがスキャンダルになる前に、企業がどのように管理できるかについても示唆している。

知識は力である、しかし権力が知識を制御する

ゴシップのあやふやさを認識することは、職場ゴシップのパラドックスを理解する上でどのように役立つのか?その答えは、情報を正当化する権力の役割に関係している。
 
リーダーやマネージャーが行動を正当化するためには、情報が必要だ。もしマネージャーがセクハラの訴えを調査する場合、直感だけでは動けない。誰かからその話を聞く必要がある。
 
セクハラの被害者が直接自分の上司に訴えた場合は、調査を行う正当な理由が自動的に成立する。しかし、その上司が間接的かつ非公式に(たとえば「ゴシップ」を通して)ハラスメントの話を聞き、さらに加害者とされる人物が他のマネージャーである、という複雑な事情が加わった場合はどうだろうか?
 
もしマネージャーが聞いた話をもとに行動を起こし、情報の出所が信頼できないと判明した場合、「単なるゴシップ」に基づいて行動したとして、悪い結果を招きかねない。一方、何も行動を取らず、情報が信頼に足るものだと判明した場合には、「内部情報」を無視したと非難を浴びる可能性がある。

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