ロンドンの太陽光マイクログリッドから恩恵を受ける低所得コミュニティ
(※本記事は『reasons to be cheerful』に2025年8月29日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

規制の変更により、社会住宅に住む人々も、自分たちの屋根の上で生まれるクリーンで安価な電力を利用できるようになった。
ロンドン東部にある赤レンガ造りのフランプトン・パーク団地は、英国の首都に広がる多くの住宅団地と同様の構造をしている。屋根を覆うように整然と並ぶソーラーパネルの列も、今では見慣れた光景になっている。
だが、この団地こそが、約900万人が暮らすこの都市で「公正なエネルギー移行」を実現するための先進的な取り組みの象徴だ。ここでは、低所得層の住民が太陽光発電の恩恵を直接受け、さらにはその運用に関わることで、エネルギー転換が市民に根ざしたものになっている。
「私たちが特に大切にしているのは、このエネルギー転換が“公正”であることです」と語るのは、ハックニー区の気候変動・環境・交通担当の幹部、サラ・ヤング氏だ。この取り組みを主導するハックニー区議会は、ロンドン市の地方自治体のひとつ。「誰にとっても住みやすいハックニーを目指しており、特に最も弱い立場の人々にとって住みやすくしたいのです」

これまで、社会住宅の住民は自宅の屋根に設置されたソーラーパネルの恩恵から除外されてきた。制度面や技術面の問題が壁となり、電気は共用スペースの照明に使われるか、電力網に売電されるのが一般的だった。
ところが2023年、ハックニーに拠点を置くエマージェント・エナジー社の働きかけにより、イギリス国内の規制が変更され、社会住宅の居住者も自分たちの屋根から生まれるクリーンで安価な電力を利用できるようになった。それまでは、その電力の大部分が送電網に売られていたため、住民には何のメリットもなかった。
「今では、住民がその価値の一部を享受できるようになったのです」と語るのは、同社の創業者兼CEOであるレグ・プラット氏だ。
これまでに、ハックニー区内の28の社会住宅ブロックと3つの団地に、合計約4,000枚のソーラーパネルが設置されており、これはブロック全体の電力需要の5分の1に相当する1メガワットの電力を生み出している。エマージェント・エナジーの試算によれば、最大800人の住民が、市場価格と比較して15%の電気料金の節約が見込まれるという。
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