成長戦略会議、1月から戦略分野分科会と25のWG・分科会でロードマップ検討へ
2025年12月24日、第2回日本成長戦略会議が総理大臣官邸で開催され、成長戦略の検討体制と分野横断的課題への対応の方向性を議論した。17の戦略分野における官民連携した危機管理投資、成長投資の促進に向け、新たに「戦略分野分科会」を設置することとなった。
戦略分野分科会は、内閣官房副長官を分科会長、内閣官房副長官補を分科会長代理とし、関係省庁の局長級が参加する体制で運営される。2026年1月から検討を開始し、4月から5月にかけて各分野のロードマップ案を取りまとめる予定だ。
17の戦略分野は、AI・半導体、造船、量子、合成生物学・バイオ、航空・宇宙、デジタル・サイバーセキュリティ、コンテンツ、フードテック、資源・エネルギー安全保障・GX、防災・国土強靱化、創薬・先端医療、フュージョンエネルギー、マテリアル(重要鉱物・部素材)、港湾ロジスティクス、防衛産業、情報通信、海洋で構成される(関連記事)。
各分野、責任大臣の下にワーキンググループ(WG)が設置され、産学官の有識者が参画する。AI・半導体WGには人工知能戦略大臣と経済産業大臣が共同でWG長を務め、Sakana AIの伊藤錬COO、東京大学の松尾豊教授、Rapidusの小池淳義社長など9名の有識者が名を連ねる。
スタートアップの成長は分野横断的な課題
分野横断的な課題については、既にある新技術立国・競争力強化、賃上げ環境整備、サイバーセキュリティの会議体に加え、人材育成、スタートアップ、金融、労働市場改革、家事等の負担軽減について、分科会・連絡会議を新設して検討する。
スタートアップ支援については、スタートアップ担当大臣を分科会長とする「スタートアップ政策推進分科会」が2026年1月から検討を開始する。日本のスタートアップ数は過去最多の2万5000社に達したものの、創業後の成長力強化が課題となっている。
2025年内の主要な取り組みとして、オープンイノベーション促進税制のM&A型拡充など、スタートアップ関連税制も拡充される。また、上場したスタートアップの成長を促すため、東京証券取引所グロース市場の上場維持基準が見直され、「上場5年経過後から時価総額100億円以上」へと厳格化された。これまでは「上場10年経過後から、時価総額40億円以上」だった。併せて、市場区分の変更や猶予期間に係る特例措置など、激変緩和措置も実施している。
年明け以降は、政府系金融機関等からの資金供給強化、M&Aガイダンスの策定(2025年度内)、グローバル・スタートアップ・キャンパス構想の法制化などを進める。ディープテック・スタートアップについては、17の戦略分野での官民連携投資の先導的担い手として、経済産業省・NEDO・JETRO等による伴走支援体制を構築する。
同様に分野横断的課題である人材育成については、文部科学大臣をトップとする「人材育成分科会」で検討を進める。2040年にかけてホワイトカラーが余剰となる一方、理工・デジタル系人材やエッセンシャルワーカーの不足が見込まれることから、産業構造の変化を踏まえた人材の戦略的育成が急務となっている。
具体的な取り組みとして、高等学校教育改革促進基金(2950億円)による改革拠点のパイロットケース創出、成長分野転換基金への積み増し(既存分と合わせて1000億円規模)、産業・科学革新人材事業基金(270億円)などが2025年度補正予算に盛り込まれた。
2026年度以降は、「高校教育改革グランドデザイン」の取りまとめ、大学等のリ・スキリングプログラムの充実、新技術の研究・社会実装を担う人材育成施策の検討を進め、4~5月には「人材育成改革ビジョン(仮称)」を取りまとめる方針だ。
政府は、経済財政諮問会議とも連携しながら、強い経済の実現に向けた成長戦略を推進していく構えだ。