貝殻を使った透水性コンクリート 洪水対策と食品廃棄物削減、排出量削減を同時に
イギリスの研究者たちが、捨てられた貝殻を使ったコンクリートを開発し雨水を集めることに成功した。この技術は現在、都市部の庭園やサイクリングコースでの洪水対策と食品廃棄物削減に活用されている。(※本記事は『Grist』に2024年8月29日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

イギリスのブラックプールにあるコミュニティガーデン「The People’s Pantry」では、夏に大量のルバーブ(ジャムなどに利用される酸味のある野菜)、ジャガイモ、レタスが収穫される。そこでは、隣接する低所得者向け住宅に住む住民たちが、自分たちが育てた新鮮な作物を手入れして食べる。そして、畝(うね)の下には、滑らかな貝殻の欠片が散りばめられたコンクリートシートが敷かれている。
「最初はそれほど目立ちませんが、歩くと次第に白い貝殻の欠片が見えてくるんです」と話すのは、このコミュニティガーデンを運営する「LeftCoast」のオペレーションディレクター、ヘレン・ジョーンズ氏だ。彼女が説明するこのコンクリートは砕かれた貝殻を混ぜたもので、現在では庭園を洪水から守り、雨水の排水を促している。
以前は、The People’s Pantryは頻繁に水浸しになるのが常だった。雨が降るたびに庭園の隅は湿地のようになり、不安定な地面が滑りやすくなっていたばかりか、住宅内にまで浸水することもあった。
この問題を解決するため、ジョーンズ氏は2023年4月、地元の関係者と対策を検討し始めた。2023年末には、中央ランカシャー大学の科学者チームが、この問題に対する新たな解決策を導入した。それは、セメントや骨材(砂利や岩など、一般的なコンクリートの材料)と共に、近くの魚の加工工場から出た廃棄された貝殻を使用した透水性コンクリートだった。
この素材を開発したのは、中央ランカシャー大学の廃棄物管理センター長であるカール・ウィリアムズ氏である。彼は、廃棄物と見なされていたものを有効な資源に変えることに注力しており、廃棄されるはずの貝殻を活用することで都市環境を改善する可能性を探ってきた。
「廃棄物利用のカーボンフットプリントを最小限にするために、地元での解決策を探しています」とウィリアムズ氏は述べる。
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