本物そっくりの美味しい植物性チーズ 精密発酵とAIのスタートアップが迫る
(※本記事は気候変動やよりよい未来に役立つ情報を掲載する非営利メディア『Grist』に2024年8月16日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています。)
次世代のチーズメーカー、微生物を利用した精密発酵とAIを駆使して植物由来食品の最終難関「おいしさ」に挑む
昨年YouTubeにアップロードされた動画で、家庭料理のインフルエンサーであるアレクサ・サントス氏は、ブリーチーズのホイールに切れ目を入れ、蜂蜜をかけた後、熱々の鋳鉄製フライパンに投げ入れた。「チーズがあるからヴィーガンにはなれないんです」と彼女は説明しながら、ブラックベリーとヘーゼルナッツと一緒にチーズを焼き上げ、バゲットのスライスに塗っていた。
彼女の意見は多くの人々の共感を呼んでいる。植物由来の食品を優先したい人々が、チェダーチーズやシェーブル(ヤギのチーズ)を手放せないと告白する長いスレッドが、Reddit(アメリカの掲示板型ソーシャルニュースサイト)には数多く存在する。植物性チーズ会社のMiyoko's Creameryの創業者であるミヨコ・シンナー氏も、最近のNetflixのドキュメンタリーシリーズで、同様の声をよく耳にすると述べている。「人々がチーズを手放せないというのは、本当に面白いですね」と彼女は語った。
私にもその気持ちがよく分かる。どうすれば、とろけるチーズフォンデュや、雪のように積もったすりおろしのパルメザンチーズを前に、最もCO2排出量の多い乳製品をやめられるというのだろうか?
チーズ好きにとって、チーズの環境負荷を無視するのは難しい。主要な食品の中で、チーズが気候へ及ぼす影響は、赤身肉や養殖エビに次いで大きい。これは、乳牛が排出するメタンガスが原因であり、また、チーズは1ポンドのチーズを作るのに平均して10ポンドの生乳が必要となるほど、濃縮された製品であるからだ。さらに、パルミジャーノ・レッジャーノのような硬いチーズは、リコッタのような柔らかいチーズよりも多くの牛乳を要する。また、チーズは水の使用量も非常に多く、1ポンドあたり516ガロン(1953.27リットル)の水が必要だ。これは乳牛がアルファルファ(ムラサキウマゴヤシ:日本で食用にされているのはアルファルファのスプラウト)のように、生育に水を多く必要とする草を食べるためである。一方、アメリカ人は1980年代初頭からチーズの消費量を倍増させており、その多くはピザとして消費されている。アメリカの乳製品チーズの消費量を少し減らすことで環境への負担を大幅に軽減できるのだが、これまでのところ、その可能性が見えてきたという具体的な兆候はない。
だが、今は違う。初めて、2つの代替チーズメーカーが、熱心な乳製品マニアをも納得させるような植物性チーズを売り出したのだ。
続きは無料会員登録後、ログインしてご覧いただけます。
-
記事本文残り88%
月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!
初月無料トライアル!
- 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
- バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
- フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待
※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。