欧州で広がる「30キロ制限エリア」 交通事故が減少、自転車利用率が増加
(※本記事は『reasons to be cheerful』に2024年6月11日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)
ヨーロッパ各地の都市で、制限速度を下げることが、安全で快適な地域作りにつながり、自動車への依存を減らすことが証明されている。
スイスとドイツが目と鼻の先にあり、青きボーデン湖畔に位置し、周囲を森で覆われた丘陵地帯にあるオーストリアのブレゲンツは、牧歌的な古い町だが、非常に現代的な問題、つまり交通問題に直面している。「我々は人口3万人と大きな都市ではないが、市内でも市外でも交通量が多い」と、市の交通計画担当者であるシリル・ブルックナー氏は説明する。
市の中心部から徒歩5分、交通量が多い州道沿いに住むバーバラ氏、クリスチャン氏のトゥエール夫妻にとって、この問題は日常生活に影響を及ぼしている。「我々にとって1番の問題は騒音だ。(電気自動車やSUVの普及で)車は以前より2倍重く、タイヤ幅は2倍になり、とにかく非常にうるさい」と夫のクリスチャン・トゥエール氏は説明する。
こうした苦境に直面しているのはトゥエール夫妻だけではない。世界保健機関(WHO)によると、交通騒音(道路、鉄道、航空交通を含む)は、西ヨーロッパで2番目に重要な健康を害する原因であり、特に子供や高齢者、慢性疾患を有する人に影響を与えている。
トゥエール夫妻は、シュトゥットガルトやコンスタンツといった近隣のドイツ都市が、交通騒音対策として速度制限を導入していることに触発され、市内の制限速度の引き下げを求める市民運動を開始した。「ドイツで可能なら、ここでもできるはず」とクリスチャン・トゥエール氏は言う。彼らの最初の勝利は昨年、自宅前を通る州道の速度制限が時速60キロから50キロに引き下げられたことだった。今年2月にはブレゲンツ市内の一般道(ただしフォアアールベルク州管轄下の州道は含まれない)の制限速度が時速30キロ(約19マイル)に設定。ブレゲンツは、安全性や生活の質向上、持続可能な交通を推進するために速度を下げるヨーロッパ都市の一員に加わった。

ドイツ語圏では「Tempo 30」、ヨーロッパ全域では「City 30」、WHOによる「Love30」、そして英国および米国では「20’s Plenty」(単位は時速マイル)と呼ばれる様々な取り組みが、近年盛り上がりをみせている。パリとブリュッセルは2021年に時速30キロの規定速度制限を導入し、仏リヨンは2022年に、伊ボローニャは2024年初頭に導入。ミラノやパルマも今年中に続く予定だ。EU外では、ウェールズが2023年9月にすべての生活道路にデフォルトで時速20マイル制限を導入し、ポートランドなど米国のいくつかの都市でも、生活道路の制限速度を時速20マイルに引き下げ始めている。
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