従業員が働きたくなるオフィスとは?企業に潜入して見つけた3つの変革戦術
(※本記事は『THE CONVERSATION』に2025年1月17日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

パンデミックによるロックダウンから5年が経過した。しばらくの間、COVID-19によってオフィスは無力化したかのように思えた。
オフィス回帰する企業の数は、ますます増えている。何十年にも渡り、リモートワークとコラボレーションを研究してきた教授として異論はある。しかし、企業が従業員にほとんどの時間オフィスで働くことを奨励する、いわゆる「オフィス勤務重視」のアプローチから、私たちは学ぶべきことがある。
仕事(現場)に戻る
私たちは、米中西部に本社を置き全米に複数のサテライスオフィスを持つ、オフィス勤務重視の企業を調査した。パンデミック前、ロックダウン中、そしてオフィス復帰の状況を追って、私たちは2年余りこの企業に密着し、合計56人の従業員に対して、現場視察、フォーカス・グループ、1対1のインタビューを行った。
社員たちが職場について語る言葉が、非常に印象的だった。
- 「ここが私の場所です。とても大切にされていると感じます」
- 「オフィスに来るたびに、歓迎されていると実感します」
- 「毎日働きに戻ってくるのが楽しみになる、居心地のよい場所です」
これらのコメントは、この企業のポジティブな文化を物語っている。だが、また非常に興味深いことも示唆している。従業員がオフィススペースを、居心地よい場所だとみなしている可能性があるということだ。
これは重要な点だ。なぜなら、人類学から組織論に至るまで、人々は単なる空間ではなく、場所に愛着を持つことが研究でわかっているからだ。家と家庭の違いを考えてみよう。家は建物だが、家庭はコミュニティの場である。
オフィスは家庭ではないが、雇用主が職場を単なる作業スペースではなく、ワークプレイスやコミュニティの場へと変えることで、オフィス勤務重視戦略が成功することを私たちは学んだ。私たちが発見した3つの変革戦術は次のとおりだ。
1. 場所のための空間を提供する
オフィスはコミュニティをサポートできるか? ワークスペースは、ワークプレイスとして機能し得るか?
私たちの調査では、従業員が自分のニーズを満たしている時、オフィスを居心地よい場所だとみなしている。そこで達成できる目標が多ければ多いほど、そのスペースへの愛着は増す。
ある社員はこう語った。「1人で働きたいなら、あるいは誰かと協力したいなら、それに応じたスペースがあります。50人でランチを楽しむこともできるし、1対1の会話にも適したスペースもある。その日の気分や達成したいことに合わせて、柔軟に対応できるんです」。
これは「スペース」を、さまざまな仕事に関連するニーズや人間的なニーズに応じた「場所(プレイス)」に再設計する価値を示している、と考える。
私たちはまた、従業員ごとにワークステーションを提供する重要性についても確認した。理由は単純だ。人間には縄張り意識がある。もし家族の写真すらデスクに飾れないなら、人間らしさを奪われたような気持ちになる。ある従業員が教えてくれた。「あちこち移動させられる会社が多いのは知ってます。私にとってはひどい話ですね。ここには仕切られた自分専用のスペースがあって、私はそこが気に入っているんです」。
毎日オフィスで、自分のマグカップや専用マウスであっても、自分の荷物を運ばなければならないのは非常に不便だということは言うまでもない。デスクの共有は場所への愛着とは相反する、人々を歯車のように扱うからだ。
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