高市政権の農政課題を田代洋一氏が分析 水田作と自給率の行方に警鐘
(※本記事は「JAcom 農業協同組合新聞」に2025年10月22日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)
10月21日、女性初の高市早苗総理が誕生し高市内閣が発足、農相には鈴木憲和衆議院議員が就任した。参議院選挙から3カ月経ってようやく新政権が発足したが、農政では今後の米価下落など懸念されるなか、水田政策の見直しの具体化などが喫緊の課題となる。横浜国大名誉教授の田代洋一氏に高市政権と農政の課題を提起してもらった。
国民感情からずれた自民党総裁選
戦後80年、今や歴史的な政治変動が始った。そこに焦点をあててこの間の動きを見る。
それは、世論調査で石破(内閣)支持率が上昇しつつあったまさにその時、自民党が石破を引きずり下ろす挙に出たことに始まった。世論の意向と自民党のそれが完全にすれ違った瞬間だ。
そのこともあり、総裁選は政策論争無き慣れ合いに終始し、国民の関心を呼ばなかった。高市勝利については、地方の、参政党に保守票を奪われたことへの危機感が決定的だったようだ。右寄りの支持者をつなぎとめるため、自ら右シフトする動きである。しかしそうすれば、右はもっと右に行く。右傾化を競う競争がとめどなくなることが懸念される。次回以降の選挙が注目されるところだ。
自公連立の終焉
総裁選が終わるや連立協議が始まった。維新が小泉勝利にかけたなかで、勝利した高市総裁はまず国民民主に呼び掛けた。そこに公明が連立解消する事態が起こった。政治資金の改革実現不可能、靖国参拝等の歴史認識、外国人排除の三点での公明の決別はすっきりしている。
自公連立は、単独過半数を維持できなくなった自民が、各選挙区1~2万票ともいわれる公明票を小選挙区自民候補に回してもらい、代わりに自民党票を公明の比例区に回すという「票取引の連立」だった。
しかるに公明の比例区得票は、2005年衆院選の898万票から2025年参院選の521万票へと2/3に減った。その一因は、自民党票が回ってこなくなったことだろう。加えて裏金問題を払拭できない自民党と組むマイナスが大きい。
自公連立政権26年が、政治の安定に寄与したと見るか、自民党延命策として1955年体制(自民半永久政権)の解体を遅らせたと見るかは、政治的立場によろう。公明という「歯止め役」を失った政権が、安保法制強化(防衛予算増)に走り、結果、農林予算があおりを食うようなことがあってはならない。
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