リコー 社内外の資源を統合する事業創出のエコシステム

複合機を中心としたOAメーカーからデジタルサービスの会社へ転換を図るリコーは、2019年から新規事業提案制度『TRIBUS(トライバス)』を開始。社内起業と社外スタートアップ支援との両輪で新規事業創出を目指す。

大企業病からの脱却を目指す

2019年に開始、今年3期目を迎えるリコーの新規事業提案制度『TRIBUS』。制度の背景には、山下良則社長の既存ビジネスに頼る『大企業病』への危機感、そして、現状打破のためには新規事業の創出と組織・社員の活性化が必要だという強い思いがあったという。

TRIBUS推進室長の駒場氏は「当社は2036年に100周年を迎えますが、山下は『100歳の次は101歳ではなく、1歳からのスタート』と言っています。『TRIBUS』の取り組みは、次の100年に向けた重要な施策です」と話す。

右/駒場瑞穂 リコー TRIBUS推進室 室長
左/大越瑛美 リコー TRIBUS推進室 TRIBUS運営事務局

社内起業育成とスタートアップ支援の両輪推進

『TRIBUS』は社内からの事業提案を受ける起業家育成プログラムと外部スタートアップの支援プログラムが途中で合流する、統合型アクセラレータープログラム。

前者ではグループ全社から提案を募り、書類審査、面談、ピッチコンテストを行いチームを選考。スタートアップの支援プログラムと合流する段階で再度ピッチを行い、ここで選出されたチームが約4か月間のアクセラレータープログラムに進む。審査はリコーの役員と社外VCで行う。毎年、約200件の応募のうち12件ほどが成果発表を行い、採択された社内チームは2年間事業化を目指した活動を行う。社員が参加チームをサポートする『サポーターズ制度』もあり、350名以上の登録があるという。社内起業の促進と、リコーのリソースを活用したスタートアップ支援を両輪で回すという特徴的なプログラム設計だ。

「アクセラレータープログラムでは、スタートアップとともに4カ月間、事業拡大に向けて活動することを自ら希望する社員が任命されます。社外の視点や考え方、スタートアップならではのスピード感などを学ぶ機会になっています」と『TRIBUS』運営事務局の大越氏。

左/前鼻 毅 リコー TRIBUS推進室 リコー バーチャルワークプレイスチーム リーダー
右/藤田 京子 リコー TRIBUS推進室 リコー バーチャルワークプレイスチーム

事業化が進むVR事業

『TRIBUS』発の事業に、バーチャルリアリティ(VR)を活用した『リコーバーチャルワークプレイス』がある。 サービスを開発したのは、前鼻氏、藤田氏を中心としたチーム。前鼻氏はグループ会社のリコーITソリューションズでVRを用いたサービス構築を考えており、『TRIBUS』第一期に応募、採択された。

当初は広くコミュニケーションツールとしてのVR活用を想定していたが、採択までの過程で対象を絞ることを決断。現在は、建設業向けソリューションとして事業化を進めている。藤田氏も「お客様からのフィードバックでアイデアが磨かれた」と話す。

今後、『TRIBUS』ではスタートアップとの連携において、段階的な拡販支援といった事業化の手法に柔軟性を持たせることなどが課題だという。大企業×スタートアップによる事業創出に期待したい。

 

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