三井不動産 グループを巻き込み、現場社員の光るアイデアを発掘
オフィスから商業施設、住宅、ホテルなど、幅広い事業を展開する三井不動産グループ。『不動産そのもののイノベーション』へ向けた取り組みとして、新規事業提案制度〈MAG!C〉を推進する。
現場起点のイノベーションを狙う
中期経営計画・VISION 2025で『不動産そのもののイノベーション』を掲げる三井不動産グループ。施策の1つとして2018年に創設されたのが〈MAG!C〉(マジック)だ。
同制度を運営するビジネスイノベーション推進部長の須永氏は「土地を買い、建物を建てて貸すというこれまでの不動産事業とは違うビジネスモデルを、オール三井不動産で生み出していく。そのための装置が〈MAG!C〉です」と話す。
制度の対象は三井不動産本体を含めたグループ12社。『現場起点でのイノベーションを生む』ことを狙い、第2回からは実際に顧客と接し、課題やニーズを肌で感じているグループ会社にも対象を広げた。
投資額が大きい分、意思決定に重きが置かれる不動産会社では、縦のヒエラルキーが強い傾向にあるという。若手の感性、現場の人間が捉えている感覚を、従来の仕組みだけでは、経営層が見過ごしてしまう可能性もある。
「グループ会社の現場社員、若手社員のキラリと光るアイデアを引き上げるために提案制度が機能しています」(須永氏)
提案内容は業務改善に近いものから、既存事業の延長線、全く飛び地の事業まで可能。社会がデジタル化し顧客ニーズが多様化する中、成長を加速させるために開始された制度だが、「コロナ禍でその重要性がさらに高まり、社内で注目を集めています」と同推進部の福島氏はいう。
活躍の場、権限や裁量を与える
制度設計や情報発信に携わる林崎氏は、「現場社員や若手が活躍する機会を増やすことも提案制度の重要な役割です」と話す。
2019年12月には、社内ベンチャー企業・GREENCOLLARが〈MAG!C〉から誕生した。『しぜんと、生きる。』をビジョンに掲げ、大自然の中で身体と頭と感性を使い、北半球と南半球の季節ギャップを活かし、通年で日本品種の生食用ぶどうを育てている。不動産からはかけ離れた事業を行うGREENCOLLAR。代表取締役の鏑木氏は法人営業部門で顧客企業との共創を複数手がけてきたが、2015年に山梨とニュージーランドで生食用ぶどうの生産を行っていた現在の事業パートナーと出会って興味をもち、2018年の第1回〈MAG!C〉に、当時の上司2人と共同で提案したという。
通常、事業提案ではプロトタイプなどを使って結果や中身をある程度示すことで判断を仰ぐ。しかし、植えてから実がなるまで4年かかるぶどうは、プロトタイプのつくりようがない。
「最終的に審査を通ったのは、我々3人の情熱。『何としてもやる』という覚悟が認められたのだと思います」(鏑木氏)
一方で須永氏は、同提案の強みは「中身がきわめて具体的であったこと」と振り返る。実績のあるパートナーを確保しており、実現性が高かったことが採用理由の1つだ。
「分社化したこともあり、現在、経営層が担う責任の重さを実感しています」(鏑木氏)
大企業では社員が決裁権や裁量をもつまでには時間がかかるが、そうした経験を若いうちから積むことができる点でも提案制度は効果的だ。
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