米国で普及した社会保険番号 利便性とセキュリティの両立が課題に

米国も英国同様、統一的な国民識別番号制度を持たない国だが、2001年の同時多発テロ以降、IDによる管理を強化している。もとは社会福祉制度のために導入された1人1つの社会保障番号(SSN)が、その利便性の高さから流用され、セキュリティ上の問題を引き起こしている。

 

3億3300万人、世界第3位の人口を抱える米国だが、統一的な身分証明システムはなく、複数のIDが存在している状態にある。例えば、米国連邦政府は国籍を証明する方法としてパスポートと「パスポートカード」を発行している。「パスポートカード」は、カナダやメキシコ、カリブ海諸国との国境のそばに住んでいる市民のために発行されるカードだ。

また、米国の各州が発行する運転免許証も身分証明書として使用される。運転はできないが身分証明が必要な市民に向けて、「運転許可なし運転免許証」を発行する州も多い。この他にも、一部の州・準州では、自主的な身分証明書を発行している。これらのIDカードのほとんどは、連邦法であるReal ID Act(2005年)に準拠しており、この法律によりIDカードの標準が定められた。米国では、特定の状況においては有効なID(米国または外国のパスポートを含む)の提示を求めることが法的に認められている。

Real ID Actは、2001年9月11日の同時多発テロ後に制定された。他にも様々な要因はあったが、米国内の国内航空便を利用する乗客に身分証明書の提示を要求する動きは同法制定を後押しした。また、重要度の高い連邦施設にアクセスするには、この法律に準拠した身分証明書の提示が必要となる場合がある。各州が発行したIDカードの基盤となっているデータベースへのアクセスを、相互に共有することも求めている。州間でデータを相互に比較できれば、市民が異なる州から異なる名前で身分証明書を取得することを防止しやすくなるためだ。

米国の運転免許証。日本とは異なり、身長・体重なども記載される。Real ID Actに準拠した免許証には星印がつく(右)

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