近鉄グループvs阪急阪神 岐路に立つ私鉄ビジネス、次の一手は

鉄道路線と沿線住宅地の開発、沿線住民のニーズを満たす百貨店や娯楽施設の運営といった鉄道会社のビジネスモデルは、少子高齢化の進行や、長引くコロナ禍などによって大きな岐路に立つ。関西圏の2大運輸グループは、どのような戦略を立てているのだろうか。

新たなビジネスの形を模索する、関西の鉄道大手2社

少子高齢化・人口減少の進行に伴い、鉄道事業は大きな変革期を迎えている。鉄道路線を整備し、沿線を開発し、百貨店や娯楽施設をつくるといった旧来のビジネスのモデルからの転換を迫られるなか、長引くコロナ禍によって転換の急加速を余儀なくされた。働き方、ライフスタイルが大きく変わった今、地域の生活・産業基盤を担う鉄道会社は、どのような戦略を考えているのだろうか。関西エリアを代表する大手2社、近鉄グループホールディングスと阪急阪神ホールディングスの方向性を見る。

近鉄グループHDは、近畿日本鉄道などの運輸事業、不動産事業のほか、近鉄百貨店やあべのハルカス近鉄本店といった流通業、国内外に展開する都ホテルリゾーツやKNT-CTホールディングスほかのホテル・レジャー事業を展開する。

2022年8月には、近鉄エクスプレス(KWE)を完全子会社として国際物流業にも乗り出し、グローバル市場に打って出た。KWEは、世界45ヵ国304都市にネットワークを持ち、航空物量世界ランキング第9位というグローバル企業だ。近鉄グループの事業ポートフォリオは、これまでBtoCが中心だったが、長期的な国内市場の縮小もにらみ、BtoB分野の拡充とグローバル化を一気に進めることでポートフォリオの健全化を図る。

国内事業では、「中期経営計画2024」のもと、「DXによる新規事業・サービス創出」にも力を入れる。その中心は「近鉄沿線デジタルサービスプラットフォームの構築」で、これまで各社それぞれに持っていたアプリの顧客データを統合し、効率的なサービス提供を目指す。また、「地域の課題解決を目指したまちづくり」では、行政と連携し、グループ協業での駅周辺の一体的再開発や、百貨店郊外店などを地域共創型の施設へリニューアルする事業を進める。

一方、阪急阪神HDは、阪急電鉄など6社を中核会社に位置づけ、都市交通、不動産をはじめ、阪神タイガースや宝塚舞台といったエンタテインメント事業、情報通信事業、国際輸送事業を展開する。

2022年5月には、新たに「長期ビジョン-2040年に向けて」を策定し、「関西で圧倒的No.1の沿線の実現」、「コンテンツの魅力最大化」など4つの戦略を打ち出した。戦略実現のための中期経営計画が掲げる重点施策の一つ、「DXの取り組み」では、「阪急阪神DXプロジェクト」を推進する。グループ共通IDを導入し、顧客データ統合・分析を強化するために、2021年、「データ分析ラボ」も設立している。そのデータ分析に基づいて、情報発信ツールの拡充やメタバースでのイベント展開など、デジタルならではの利便性を最大限に追求する。その際、グループの持つ豊富なコンテンツを再点検し、特に「旅やショッピングの実体験」を新たなコンテンツとして磨き上げていく考えだ。

「関西で圧倒的No.1の沿線の実現」に向けては、グループの最重要拠点「大阪梅田エリア」の価値向上を目指す「梅田ビジョン」のもと、同エリアを新産業創出拠点、国際交流拠点とする視点から大型開発を進めている。

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