子育てから始まった挑戦―マルゴトが実現する「全員の理想をともに叶える」経営

完全フルリモートで約190名が38都道府県から働く独自の組織運営で、550社以上の採用を支援してきたマルゴト株式会社。代表自身の子育てのために始めた在宅勤務が、多くの企業と人材の理想を叶える事業へと成長した。それを実現したのは、在宅勤務と組織活性を両立させる独自の仕組みがあった。さらに「専門性あるノンコア業務代行」領域のさらなる拡大、そして社員数・支援企業数ともに3年で3倍を目指す展望について、代表取締役の今啓亮氏に聞いた。

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今 啓亮(マルゴト株式会社 代表取締役社長)

子育てのための起業から、すべての人の理想を叶える企業へ

-創業の経緯を教えてください。

起業した経緯は、完全に子育てのためでした。2015年、29歳のときに生まれてくる子どものために仕事と子育てを両立できる、ワーフライフバランスの取れた在宅勤務の仕事を探していました。しかし当時、リモートワークという概念は一般には浸透しておらず、面接時に『在宅勤務で働きたい』と伝えると『仕事する気あるの?』と聞かれる時代でした。それならば自分で理想の働き方を創造しよう、そう決意して会社を立ち上げました。

起業して3年、紆余曲折を経ながら採用代行事業を通じて、自分が理想としていたワークライフバランスを実現しながらも、多くの顧客から支持をいただくようになりました。一方、社員は僕一人だったこともあり、採用にお困りの企業が多数ある中で支援できる顧客の数は限られていたため、『自分の理想だけではなく、もっと多くの顧客の理想を叶えたい』という気持ちが強くなっていきました。

さらに転機となったのは、大手企業に勤める女性の同級生からの言葉でした。『福利厚生が充実した駅直結のオフィスより、あなたの在宅ワークの方が魅力的に感じる』―その言葉から、フルリモートという働き方への潜在的なニーズの大きさを実感しました。4年目から社員雇用を開始し、『出社禁止、全員在宅』という当時としてはユニークな職場を設計しました。

5人組ユニット制が実現する、フルリモートと組織化の両立

-190名が38都道府県に分散する組織をどのように機能させているのですか。

社員全員フルリモートの組織を機能させているのが、マルゴト独自の『5人組ユニット制』です。

現在、弊社にはおよそ190名の社員が在籍し、北海道から沖縄まで38都道府県に点在しています。管理職23名のうち18名(約78%)が女性という、極めて特徴的な組織構成になっていますが、これは特別なことをしたわけではなく、男女関係なく活躍できる職場を作った結果です。

190名全員での情報共有は困難ですが、5人という単位なら気軽に相談できます。各ユニットにはリーダーを配置し、週次で1対1のミーティングを実施しています。一人ひとりがそれぞれのことを把握し、しっかり支えあえるチームの適正人数は5人だと考えています。10人だと『最近この人と話してないな』ということが起きてしまいます。

私たちの組織運営の根幹にあるのは『顧客のために働く』という純粋な理念です。代表の僕のために働いている社員なんて1人もいません。顧客のために全力を尽くすのは当然として、その時に自分のスキルが高ければ、もっと良い支援ができる。だから自分のスキルを磨いて欲しいというロジックしかありません。

年間4000件のノウハウ共有が生む組織力

-リモート環境で、どのように社員のスキルアップを実現しているのでしょうか。

もともと自律できる人材のみを採用していることが大前提にあります。年間1万人以上の応募から採用するのはわずか50名程度、倍率は200倍に達します。全員が中途採用の経験豊富なプロフェッショナルで、自律的に価値を創造できる人材を厳選しています。

その上で、評価制度を社員の持っているスキルに特化させていることです。売上ではなく、細分化されたスキル項目で評価し、それが給与に直結しています。採用業務スキル、顧客理解度、媒体運用能力など、専門性を細かく評価する仕組みを作っています。

さらに、リモートワークの環境下でもノウハウ共有の仕組みが整っている点が挙げられます。年間4,000件を超えるノウハウ共有が、会社のSlack上で行われています。1人がインプットしたことを会社全体に対してアウトプットしたら、190人がインプットすることになる。これを190人レベルでやると、すごい大きな渦になります。実践、アウトプット、インプットの好循環が、組織全体のレベルアップを促進しています。

人材の質で差別化する採用代行サービス

-採用代行サービスの強みと、他社との差別化ポイントを教えてください。

採用代行に関しては、サービス内容では差が付きにくいため、人材の質こそが最大の差別化となります。

前述の通り、厳格な採用基準により集まったメンバーは、全員が採用のプロフェッショナルとして各専門領域で高い実績を有しています。フルリモート環境でありながら、継続的な成長を実現する質の高い人材が揃っており、このクオリティの高さこそが、他社には真似できない当社の優位性となっています。

例えば、建設業の施工管理職採用では、若手にこだわる企業に『40代~50代でも活躍できる職場』という新たな視点を提案し、採用成功に導いた実績もあります。AIでは判断できない市場の機微や企業文化の理解があるからこそ、クライアントが人材を募集する前の段階から戦略的なアドバイスができるのです。

バックオフィス代行への領域拡大と3倍成長への挑戦

-今後の事業展開と成長戦略について教えてください。

今後は採用代行から、経理・労務などバックオフィス業務全般へと事業領域を拡大予定です。「企業の一番大事な本業(コア業務)ではないけれど、専門性が高い領域」にもっとサービス展開していきたいと考えています。2017年に開始した採用代行サービス『まるごと人事』に加え、2021年にはバックオフィス代行『まるごと管理部』も開始しました。

従来のアウトソーシングは、「『コア業務でもない』うえに『専門性の低い』領域」が対象でした。しかし、そのような領域はAIに置き換わったり、DX化の波に飲まれるでしょう。その中で、「『コア業務ではない』が『専門性の高い』領域」の代行業務の領域を拡大していく予定です。

また、今後3年で、社員数・支援企業数ともに3倍への拡大を目指し、資金調達を行いました。強調したいのは、ベンチャーキャピタルではなく銀行からの社債発行という資金調達手法を選んだ点です。クライアントと従業員の理想を叶えることを最優先にしているため、経営に対して意見の出る可能性がある資金の調達方法は最初から選択肢に入っていません。

現在の課題は認知度向上です。約190名中、営業担当はわずか2名。約550社の支援実績はほぼお問い合わせやご紹介で築いてきました。今後、マーケティングや営業を強化し「採用を強化するなら採用代行」という選択肢があることを、特に地方の中堅企業に知ってもらいたいです。

「理想のサービスと理想の職場を同時実現する」という経営理念のもと、採用に課題を抱える経営者も、自宅で専門性を活かして働きたい人材も、双方のニーズに応える価値を提供しています。今後も、より多くの企業と人材の理想を叶えるパートナーとして成長を続けていきます。

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今 啓亮(こん・けいすけ)
マルゴト株式会社 代表取締役

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