MRで楽しく自然と健康に 予防から始まる未来の暮らし
(※本記事は経済産業省近畿経済産業局が運営する「公式Note」に2025年10月17日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

XR※を活用して社会課題の解決に取り組む企業や、大阪・関西万博を契機にXRがさらに広がりを見せる様子に注目する「シリーズ:XRが拓く未来社会 〜万博で見えた可能性〜」
※XRとは、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、MR(複合現実)といった、現実の物理空間と仮想空間を融合させて、新たな体験を創造する先端技術の総称。
第5回は、MR技術を活用したリハビリ支援サービスを展開する株式会社テクリコをご紹介します。
「健康志向2.0」――健康そのものを楽しむ新しいライフスタイル
2025年8月、大阪・関西万博の大阪ヘルスケアパビリオンで、「高齢者が健康になっちゃうメタバース」を展示していたのは、株式会社テクリコ。MR技術※を医療リハビリ分野に活用し、すべての人が楽しみながら健康に暮らせる社会の実現を目指す企業です。
※仮想の空間と現実の空間とを融合し、両者を重ねて体験できる技術。
テクリコが提供するのは、リハビリテーション支援システム「リハまる」。MRゴーグルを通じて現実世界にCGのトレーニングメニューを映し出すリハビリ支援アプリです。ゲーム感覚で楽しみながら体を動かせるので、リハビリが続けやすく、また、難易度調整の幅が広く、高い効果が期待できるとともに、データ収集が容易で、使用者にとっては振り返りにも活用できます。
万博では、この「リハまる」をもとに、高齢者の健康増進、介護予防、家族との交流を同時に実現する新サービス「リハまるGO」の体験展示を実施し、来場者の注目を集めていました。「リハまるGO」の大きな特徴は、メタバース空間を活用することで、高齢者が社会とつながり、リハビリを楽しく続けられることです。
MRゴーグルを被ると、目の前に医師が現れ、その人に合った認知症予防のトレーニングが始まります。トレーニングをクリアするとポイントが貯まる仕組みになっており、そのポイントを使ってメタバース内でプレゼント交換やバーチャル会食が可能になります。リハビリを続け、ポイントを貯めることで、お孫さんにプレゼントを贈ることができたり、メタバース空間で家族と食卓を囲むことができたりと、トレーニングのモチベーション向上と家族とのつながりによる孤独感の軽減とを両立させる仕組みになっています。
同社では、罹患後だけでなく、一般の方向けの予防の段階から支援するサービスを以前から構想しており、万博はその構想を形にして発信する絶好の機会だったといいます。
「家庭で使ってもらうには、続けたくなる仕組みが必要。地域の商店との連携も視野に入れ、ポイントを地域で使えるような仕組みづくりを考えています。」と代表の杉山さんは話します。
万博で広がった“つながり”
テクリコは、万博での出展を通じて、国内外からの反響を得ました。
- 大阪ヘルスケアパビリオン(大阪商工会議所ブース)での展示
- TEAM EXPO 2025のベストプラクティス選定・登壇※
- 関西医科大学との共同展示(イタリア館)
※TEAM EXPO 2025は、大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)の公式プログラムの一つで、「みんながつくる参加型の万博」を目指す取組。ベストプラクティスは、世界の重要な課題を解決する良質なプロジェクトを発信するプログラムのこと。
「これまでは専門家や病院関係者の方向けに展開してきましたが、万博を通じて、一般の方にも未来の生活をしっかりとお示しできたと感じています。『認知症予防について考えるきっかけになった』『将来、このような世界になることが楽しみ』といった声もいただきました。」と杉山さんは振り返ります。
普段はユーザーと接する機会の少ない開発部門の社員も、今回の出展を通じて来場者の声に直接触れ、今後のサービスづくりに活かせる多くの気づきを得ることができたといいます。
TEAM EXPO 2025のベストプラクティスには、非常に多くの応募の中から25の取組みの1つとして選定され、TEAM EXPOパビリオン内で常設展示を実施。当プログラムの登壇イベントでは、とある国の政府関係者から「自国でも需要があると思う。今後展開予定はないのか?」と質問が寄せられたそうです。
また、イタリアのデザイン工房である「イタルデザイン」より、リハビリ画面に出てくるバスケットボールのデザインなどのコンテンツの一部をデザインしてもらい、イタリア館に一定期間展示を行ったとのこと。テクリコでは、この機にイタリアとのつながりも継続していきたいと考えており、万博を通じた国際的な連携の可能性も広がりつつあります。
万博のテーマとテクリコが描く未来
テクリコでは、万博の誘致が決まった時から出展に向けて準備を進めていました。地元大阪での開催であり、万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」も同社の目指す世界と一致。世界に向けて発信する機会を求めていた同社にとって、絶好の機会だったそうです。
「ARやMRがリビングにあるのが当たり前になる世界が必ず来ると考えています。その時に、健康や予防の観点から、エンターテインメント性を取り入れたサービスを提供していきたい。」と杉山さんは語ります。
テクリコが描くのは、MR技術を通して高齢者が家族や地域社会全体と自然とつながり、誰もが無理なく心身ともに健康になれるような社会。―万博をきっかけに、その未来が少しずつ現実になろうとしています。
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- 近畿経済産業局 公式note