エンタメ企業ならではの資源を活かす エイベックスのサステナ活動

日本を代表するエンタテインメント企業のエイベックスは2022年11月、サステナビリティポリシーを策定し、本業を通じた社会貢献についての姿勢を明確化した。新設されたサステナビリティ推進室の西本京史室長に、ポリシー策定の経緯や具体的なアクションについて聞いた。

西本 京史　エイベックス サステナビリティ推進室室長

自社のアイデンティティを見つめ
サステナビリティ活動を構築

アーティストやタレントのマネジメントやレーベル、ライブ、アニメ・映像など多様なエンタテインメントビジネスを展開するエイベックスは、2022年7月、「エンタテインメントの可能性に挑みつづける。」という企業理念を策定し、企業としての社会的使命を明確化した。

これを踏まえて2022年11月にサステナビリティポリシーを策定、「未来の才能と、未知の感動への貢献。多様な才能と感動が創り出す豊かで創造的な未来を信じ、エンタテインメント企業として持続可能な社会に貢献する新たな価値モデルの創造を目指す」とした。ポリシーを具体化する上でのマテリアリティ（重要課題）としては、①「無形の豊かさを創る、届ける、②「次世代」を創る、届ける、③「無形の豊かさ」と「次世代」を創るための土台となる組織文化づくり、の３点を抽出している。

ポリシー策定に至る経緯について、サステナビリティ推進室の西本京史室長はこう語る。

「当社は、東日本大震災以降、特に原発事故の影響を受けた南相馬市と連携してダンサーを派遣し、子どもたちの運動不足の解消といった活動を行ってきました。また、所属のアーティストやタレントも、各自の興味や問題意識の中で、様々な社会貢献活動を行ってきました。さらに、弊社所属の『ピコ太郎』を、外務省SDGs推進大使に起用していただき、いち早くSDGsについての啓発活動も展開しました。

一方で、持続可能な社会の実現に向けた会社全体としての方向性は定めてはいませんでした。そこで、全社一丸となって、より実効性の高い取り組みを進めていくために、体系的・組織的な体制をつくる必要があったのです」

SDGsやESGなどへの世界的な関心の高まりの中、エンタテインメント企業ができることは何か。西本氏らは、「後発組」として先進企業や有識者などの声を聞くことで、その答えを探った。

「企業や機関投資家などと意見交換を重ねながら、当社にとってのマテリアリティを抽出していく過程で、環境負荷低減などのテーマよりは、アーティストなどを抱える当社ならではの強みを活かす方向に期待している、といったアドバイスもいただきました。弊社ができること、やらなければならないことは、むしろ音楽を聴いて楽しい気持ちになっていただく、元気になっていただくことを通じた貢献にあり、社会的な要請もそこにある。それが当社のアイデンティティであり原点であると考えるようになりました」

新設されたサステナビリティ推進室のメンバーには、西本氏ら社員５名の他、元外務省職員としてSDGs国内主流化チームの総括を務め、エイベックスのポリシーの方向性策定などに重要な役割を果たしてきたアドバイザーも加わった。ユニークなのは、所属のアーティスト、タレントも名を連ねていることだ。「ピコ太郎のプロデューサー」である古坂大魔王氏、ダンス＆ボーカルグループAAAのメンバーである與真司郎氏、スポーツタレントの田辺莉咲子氏が、これまでの社会貢献活動で得た知見を共有できる場となっている。

「さらに、大学生のインターンも数名、メンバーとして入っていただいて、文字通り『次世代』のリアルな声を反映でき、サステナビリティポリシーを実現できる体制になっています」

アーティストの出張授業を推進
自治体連携も加速

新しいポリシーのもと、推進室は具体的にはどのようアクションを計画しているのか。

「これまでも、修学旅行等の中高生が弊社を訪れ、エンタテインメント業界について知ってもらう『avex class エイベックスへいこう！』という取り組みがありました。今後は、これを出張授業の形にリニューアルして、可能な限り対面の形で展開していく予定です。所属アーティストなどを教育機関に派遣することで、子供たちに、才能や夢を信じる力の大切さを伝えていければと思っています」