時事テーマから斬る自治体経営 「地域活性化」という言葉の注意点

地方自治体において、「地域活性化」という言葉は当たり前に使われている。しかし、その定義は曖昧であり、人によって想定するものや、そのレベル感は異なるのが実情だ。これからの時代の地域活性化とはどのようなものであり、また、効果的にそれを実行するためには、何に留意すべきなのだろうか。

地方自治体では「地域活性化」という言葉が多く使われている。きっと自治体は地域活性化が大好きなのだろう(実は筆者も好きだ)。この「地域活性化」の5文字には、何となく輝かしい未来を期待させる。しかし、地域活性化の持つ意味は漠然としている。今回は「地域活性化」という言葉の注意点を指摘する。

地域活性化の定義とは

筆者が市役所に行き、職員に地域活性化の意味を尋ねると多様な回答がある。地域活性化は、とても曖昧な概念である。同時に合意形成しやすい言葉である。地域活性化というフレーズに心は踊るが、漠然とした状態で政策(施策・事業を含む)が展開されていく。そして曖昧だからこそ、成果が出ない状態が続く。

読者が上司から「富士山の山頂に集合!」と言われれば、目指す方向のイメージがつくはずである。一方で「山頂に集合!」と言われた場合は、どの山を目指してよいかわからないだろう。ある職員は高尾山に行くかもしれないし、別の職員は石鎚山を目指すかもしれない。その結果、何時までたっても巡り合うことはなく徒労感だけが残る。

何気なく多用する「地域活性化をしよう」という言葉は、後者の「山頂に集合」と同じような状況である。関係者の中で「地域活性化」の意味が共通化(かつ共有化)されていない。それぞれは努力しているものの、目指す方向性が異なっているため、成果が出てこない。

そもそも、「地域」・「活性」・「化」とは、どのような意味があるのだろうか。辞書で調べると、「地域」とは「一定の意味を有する空間的まとまりとして区画された地球表面の一部」とある。次に「活性」とは「機能が出現したり、効率が向上したりすること」とあり、「化」は「向かう」や「志向する」と定義されている。地域・活性・化の3語をつなぎあわせると明快な意味にならない。重要なことは、関係者間で地域活性化の意味の明確にし、共有することである。

従来の地域活性化は不可能

読者は地域活性化と聞いてどのようなイメージを持つだろうか。筆者が地域活性化のイメージを把握すると、多くの人が集まり、賑わいが創出されている状態を持つようだ。しかし、このイメージは昭和時代の地域活性化である。

日本人の平均年齢は、1970年が約32歳、1980年は約34歳、1990年が約38歳、2000年が約41歳となり、2010年が約45歳である。2020年は47.6歳となっている(「人口統計資料集(2022)」)。

47.6歳の人が「昨夜も今夜も徹夜だぜ!」と活性化していたら、読者はどう思うだろうか。「あの人ヤバい」と感じるかもしれない。辞書で初老とは「①老境に入りかけの人。②40歳の異称」とある。40歳は初老である。日本人が全体的に高齢化しているため、従来のような活性化は難しくなりつつある(というのが筆者の認識である)。

筆者は40歳半ばになってから、飛蚊症が始まり、肩石灰沈着性腱板炎、十二指腸潰瘍と続き、昨年は大腸ポリープ切除と続いている(現在進行形)。筆者は日本人の平均年齢とほぼ同じだが、とても活性化できるとは思えない(活性化したら死んでしまう)。

1980年代や1990年代は、国や自治体の政策の結果として地域が活性化したのではない。単に日本が全体的に若かったからである。しかし、今日の日本は老いている。そのような中で従来の活性化を目指すのは「老体に鞭打つ」状態と言える。かつての地域活性像を意識していたら、それは注意が必要である。

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