時事テーマから斬る自治体経営 「感染症」対策の現状
新型コロナウイルス感染症はまだまだ収束の見通しが立たないものの、ワクチンの接種が始まるなど、自治体が取り組むべき問題のフェーズは徐々に移行しつつある。各自治体は、現在どのような新型コロナウイルス感染症への対応を行っているのか? 法律や条例の観点から分析する。
新型コロナウイルス感染症が蔓延し、収束の見通しが立たない。そのため多くの分野において先行きが不透明な状態である。地方自治体の目的は「住民の福祉の増進」である。そのため新型コロナウイルス感染症に対して、多くの政策を展開してきた(現在も展開している)。
今回は、自治体が取り組む新型コロナウイルス感染症の対応を紹介する。読者に対する情報提供の意味がある。
複雑化する新型コロナウイルス 感染症の事務
新型コロナウイルス感染症に対応する法的根拠を確認する。それは「新型インフルエンザ等対策特別措置法」である。同法は新型インフルエンザ等感染症に対する対策強化を図ることにより、国民の生命や健康を保護し、生活や経済への影響を最小にすることを目的としている。現在、日本を襲っている新型コロナウイルス感染症にも対応している。
同法の第74条に「この法律の規定により地方公共団体が処理することとされている事務は、地方自治法第2条第9項第1号に規定する第1号法定受託事務とする」とある。すなわち、新型コロナウイルス感染症の対応は法定受託事務である。
法定受託事務とは「国が本来果たすべき役割に係る事務であって、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるものとして法律又はこれに基づく政令に特に定めるもの」と定義される。一方で自治事務とは「地方公共団体の処理する事務のうち、法定受託事務を除いたもの」である。
法定受託事務であるため、国が率先して方針等を決めていく必要がある(実際そうなっている)。しかし、同法は知事に営業自粛の要請(第31条の6)など多くの権限を与えている。そのため一見すると自治事務という錯覚に陥る(国がリーダーシップを発揮すべきと筆者は考えるが、知事にもリーダーシップを認めているという感じである)。また、国民一人あたり10万円が給付された「特別定額給付金」の給付事務は、市区町村の自治事務である。
これから始まるワクチンの接種は法定受託事務である。新型コロナウイルス感染症の対応がケースにより主体が異なってくる。そのため複雑化している。正直、一見するとよく分からない状況である(ただし、国民からすれば、国であろうと、都道府県であろうと、市区町村であっても、確実に新型コロナウイルス感染症の対策が実施されればよいと思われる)。
さらに、保健所を設置しているか否かで、新型コロナウイルス感染症の具体的な対応も異なってくる。保健所は、都道府県、政令指定都市、中核市、特別区が設置している(地域保健法第5条)。このような法的な限界により、自治体により新型コロナウイルス感染症の対応に差が出つつある。しかし、そのような中でも、各自治体は創意工夫を凝らして、新型コロナウイルス感染症を収束させるため、多様な政策(施策・事業を含む)を展開している。
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