気象ビジネス推進コンソーシアム 天気の情報を深く広く生かす
気候変動で災害が激甚化する中、天候のデータを蓄積し、予報を出す気象庁への期待は増している。また、IoTやAI利用の一般化で、気象関連のビッグデータ活用の敷居は下がってきた。気象データに基づく新事業や新サービス創出は、2021年の注目ポイントだ。
気象庁は、2020年12月、大手町から虎ノ門へ移転した。新庁舎への移転と共に組織再編を実施。2021年からは、新庁舎において気象データの活用や防災に取り組むことになる。
新庁舎は地上14階、地下2階建てで、1~2階に港区立みなと科学館、2階に気象庁の気象科学館を併設している。大手町の旧庁舎は東京オリンピックが開催された1964年に建築されたものだった。高い免振性能を持つ新庁舎への移転により、地震などの災害時も防災情報の提供を継続できるようになると期待されている。
この移転に先立つ10月、気象庁は組織再編を実施した。新しく設けられた「気象防災監」は、次長級ポストとして、専門的知識に基づき、防災に関する平時・緊急時におけるハイレベルの対応や省庁間調整を実施する重要な役割を担う。また、「情報基盤部」は、気象現象等を予測するモデル等を分野横断的に開発するとともに、気象情報・データの流通・利活用を促進する体制として、新設された。
AIで具現化する気象データの利用
このような気象庁のリニューアルは、最近の社会の変化を受けたものでもある。もともと、天気や気温、降水量などの天気の移り変わりを示す観測データや天気予報は、一般の人の暮らしだけでなく、農林水産業から製造業、サービス業まで様々な現場で活用されてきた。気象庁では、社会の要請に応じ、気象衛星やアメダスなどを使って様々な観測データを収集し、またスーパーコンピュータを用いて大気の状態を予測している。このような観測・予測データをもとに、作成・発表された各種の情報は、決まった形式でまとめられており、オープンデータとして利用可能だ。
一方、ここ数年のICTの高度化と普及で、過去には気軽に手が出せなかったようなデータ分析や、それに基づくシミュレーションが可能になった。これらを使って、さらに広く、高度に気象データを利用したい、という需要が生まれつつある。特に、気象とそれ以外のデータを組み合わせたビッグデータから得られる新しい知見と、それに基づく新サービス・新規事業への期待は大きい。
そこで、気象データのビジネスへの活用を目指し、2017年3月に産学官連携の組織「気象ビジネス推進コンソーシアム(WXBC)」が設立されている(事務局は気象庁)。この組織では、気象ビジネスフォーラムやセミナーを通じて、気象の専門家と様々な事業会社が連携する機会を設けてきた。2020年12月4日には、2020年度の第2回のセミナーをオンライン開催し、最新のユースケースが紹介された。
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