欧州海洋エネルギー利用最前線 ユニークな発想が実用化段階へ
日本でもようやく2050年までの排出炭素実質ゼロが宣言され、再エネへの動きが本格化しそうだ。EUでは、エネルギー転換と脱炭素化によって新産業と雇用を育成し、地域社会を潤そうという努力が続く。風力・太陽光発電技術の確立にめどがついた今、注目を集める「海洋エネルギー」の意義と事例を探る。
2019年末、初の女性リーダーの元に発足したEUの新政権が向こう4年の基本政策「欧州グリーン・ディール」を発表。脱炭素や再生エネをすべての政策分野を貫く最優先課題と位置づけた。これにそって「オフショア再生エネ欧州戦略」が発表されて、スポットライトが「海洋エネルギー」に当てられている。海洋と言うと、日本では洋上風力を思うかもしれないが、中心は潮流や波力。海洋温度差を用いるOTEC技術などを含めて「ブルーエネルギー」とも呼ばれる。
オンライン開催でも熱気
OEEカンファレンス2020
海洋エネルギーに関わる政官学を一同に集めた団体「オーシャン・エネルギー・ヨーロッパ」の年次総会は毎年12月に開催される。コロナ禍でオンライン開催となったOEE2020には、世界中から600人以上が参加し、3日半に渡るセミナーやワークショップは活気に満ちたものだった。
欧州を中心に、世界中から多くの若手技術者たちがユニークなアイデアや技術を持ち寄り、進捗状況をシェアする。EUの助成金やファンドには、数カ国にまたがる技術者や企業がコンソーシアムを作って応募するため、英語を共通語として世界中から興味を同じくする者が集まるが、日本の影は薄い。回を重ねるうちに技術開発水準を示すTRL(Technology ReadinessLevel)でもっとも実用化に近い8~9に達し、商業化間近なものが増えた。
海洋エネの意義はどこにあるのだろう。国際再生エネルギー機関(IRENA)は2020年、海洋エネに関するレポート(Off shore Renewable EnergyとInnovation Outlook: Ocean Energy Technologies)を発表。ラ・カメラ会長はこう総括した。①海洋は枯渇することのないエネルギーの宝庫で、②海洋発電装置は景観や環境への影響が少ないため観光業などとの親和性が高く、③予測可能性が高い安定したベースロード電源となること、そして、④沿岸地方や離島の既存産業(造船、海底油田採掘、養殖など)のインフラを再興したり、新産業を興したりして雇用を生み、ディーゼル脱却・地方創生につながることから「ブルー・エコノミー」として大いに期待できるのだと。
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